6-dim+ Special Contents “interview”

6時限+ はなしの時間 hanashi no jikan

#004 舞台照明デザイナー 山口明子さん

4:人が持つもの、感じるもの
ロクディムジャパンツアープロジェクト in 仙川公演の写真 ロクディムジャパンツアープロジェクト in 仙川 2017/3/20 田口歩 撮影
ヒロシ
前回の公演が仙川劇場だったんですけど。(2017年3月20日実施:ロクディムジャパンツアープロジェクト in 仙川)
あっこさん
仙川劇場、知ってる。やったこともある。
ヒロシ
今回、劇場に入れる時間と公演が終わって出なきゃいけない時間が、ロクディム史上一番短かかったんです。劇場を押さえてくれたのが、仙川に住むりょーちんなんですけども「この時間しか取れなった」と。でも「できるだろう」「やろう」ってなって、会場に18時に入って、19時に本番が始まったのかな。
あっこさん
夜区分ですね。
篤史
そういうことです。
ヒロシ
だから劇場の方も「大丈夫なのかしら?」みたいな顔してるんですよ。そりゃそうですよね。リハーサルじゃなくて本番ですから。でも結果すごく良い公演になりまして。なんかちょっとあれ、次の感じがしたね。
篤史
うん。
ヒロシ
お客さんもすごく喜んでくれたんですが、劇場の方の表情がすごく良くて。「また是非やりましょう」って話をしてくださって。劇場の方が言ってくれるってことは本当に良かったんだなあと改めて思ったんです。あれは、そこに少しずつ近づいてる感じがするんですよ。色んな失敗、成功の経験が血肉になってきて、意図はしないし作為的じゃないけど、色んなところで調整が利くようになってきてる感じがして。あぁすごいな〜って思いました。でもまぁ、もっともっと先があるので、そのチャレンジだなって思っていて。
ロクディムジャパンツアープロジェクト in 仙川公演の写真 「地球ニア」に到着し大気を確認する小田篤史とそれを見守る他メンバー
ロクディムジャパンツアープロジェクト in 仙川 2017/3/20 田口歩 撮影
あっこさん
ロクディムがやっていることっていうのは「人」に近いことでしょ?
ヒロシ
そうです。うんうん。そうです。
あっこさん
そうなんだと思う。会場にお客さんが入った時に紙配って、思うことを書いてもらって、それを拾って、その瞬間にそれに対応していく。すると、その瞬間にその人の気持ちにならなきゃいけないし、その人の背景を知らなきゃいけない。背景を知るってことは社会も、まぁ家庭の中までは分からないけれども、置かれている人生を想像する。想像力を、バァッってフル捻出して、それを表現していく。っていうことはその経験がない限りは芝居はできるはずはないので、すごい大変なことをしている人たちだなって。
ヒロシ・篤史
フフフ
あっこさん
ただそれは、こないだのVACANTでは分からなかったんですよ。でもこうやって付き合ってね、色んなことを話していくうちに「あ、そういうことか」と。今日もいろんな話をさせてもらって、社会のこともちゃんと考えているんだってことも分かったし、とってもおもしろい世界に、そしてむずかしい世界に足を踏み込んだ人たちなんだなぁって(笑)
一同
(笑)
あっこさん
そして、それを笑いにもっていくっていうことの難しさ。
ヒロシ
そうですね、そうです。
あっこさん
人生経験はそりゃ分かる。でもそれを「笑い」にはなかなか持っていけないじゃない?
ヒロシ
笑いになった時の、あれ、なんでしょうね。さっき、RCサクセションのライブの後に「気持ちよかった」ってお話がありましたけど、それと共通するところな気がしていて。来てくれた方の思いとかがふっと昇華されたというか。天にふわっと舞ったみたいな感じというか。
あっこさん
共有できるということじゃないですかね。
ヒロシ
うんうんうん。
あっこさん
そこにいた人たち全員と、その感覚を共有できたこと、じゃないですか?自分のひと言、一文章が、ロクディムの体を通して表現されて、その表現されたことを観客の人たちがみんな見ていた。じゃあ、みんなそれぞれ考えてくれたよね、っていうその面白さ。それで「私は1人じゃない」って思って気持ちよくなって帰るわけだから。それはすごい力ですよ。私はそこに対しての照明を、そういうことがわかった上で、照明を当てるっていうことの幸せさを感じる。それを感じなければ全く違う照明になっていると思うんですよね。ロクディムがやっていることを理解をしている、していないでは、同じ明かりを出したとしても、なんかやっぱり違うんですよね。
ひと言を書いてもらった紙

観客に書いてもらったひと言
ロクディムの公演の特徴のひとつになっている、お客さんに書いてもらった「ひと言」を即興の芝居の中で使っていくというスタイル。どんな言葉が書いてあるかは、その言葉を読み上げるまで誰にも分かりません。舞台の中に偶然性共感性を組み込み、それを活かしていく即興性は、即興ならではの臨場感・一体感を生み出していきます。

篤史
うん。
ヒロシ
そうですよね。
あっこさん
だから、話すっていうことは、本当に大切だと思います。多分、今回の浅草九劇では、また違うものになると思いますよ、照明も。
篤史
うん。
ヒロシ
可能性って出会った人で変わるじゃないですか。全然違う世界でやってらっしゃったプロの方とご一緒する時の、その人の意見はもちろんありがたいんですけど、その人から出てくるものが、滲み出ているものが、いろんな可能性につながっていて、自分たちが知らないドアを開けてくれる感じがしていて。
あっこさん
うん。
ヒロシ
例えば「Qシートを作ってね」って言われて、作ってなかったのはアレだなと思いますけど、まあ、作ることは作れるわけですよね。で、その作った先にある世界の広がりが、作っていないのと比べたら全然違う。まずやりとりがスムーズ(笑)それこそ知らないドアを開けるじゃないですけど、その次に繋がるんだなあと。それがいろんな人と関わっていくことの面白さだし、まあ、難しさでもあるかもしれませんけど。
あっこさん
そうですね。
篤史
うん。
ヒロシ
外へどんどん開いて、僕たちがいろんな人に声をかけて、かけられて、それに対して色々うまく回るようになっていったら、すごくおもしろいことになるなあって思って。内々じゃないことの大事さ、価値は、僕らにとってすごく面白いことなんだなって思いました。
あっこさん
うん。そう思います。で、その、開くってことは、変な要素も入ってくるんですよ。
ヒロシ
あっ!なるほど!
あっこさん
そうなんですよ。作っている本人はとっても真面目に作って、お客さんもいろんなひとに来て欲しいと思う。でも、どっかから黒い分子が入ってくると、その1個の分子でその公演が潰されることがあるので。
ヒロシ
…はあ。
あっこさん
それは、やっぱり作り手のエネルギーなんですよね。変なエネルギーを出すと、変な要素を放出している人、そういう人、来るんですよ、不思議と。
篤史
へえ〜。
あっこさん
で、劇場の空気が全部真っ黒になる瞬間があるんですね。
ヒロシ
ふむふむ!
あっこさん
それで、誰かが倒れたして救急車で運ばれたりすると、その人が全部持ってってくれて。その後、すっごい綺麗なクリーンな空気に変わることがあるんですよ。これも本当で。
ヒロシ
へえ〜!
あっこさん
何回か経験しました。
篤史
うん。
あっこさん
だから、そこもちゃんとわかった上で開かなければいけないんですよ。
ヒロシ
なるほど。
あっこさん
面白いですよ〜、人が集まるってことは。
篤史
ねえ。
あっこさん
ただ、みんなが綺麗な心で純粋にやりたいと思っているのであれば大丈夫。なんかおかしいぞ、って思ってそれをちゃんと指摘してくれる人たちがいるんであればいいと思います。話戻りますけど、いろんな人と付き合うことで自分たちが想像もしなかった作業をする。そこから学んでいくっていうことは、本当にその通りだと思う。その作業の中で、客観視できるんですよね、自分たちのことを。
ヒロシ
そうそうそう、そうなんです。本当に。結局これって会話と一緒で、あ、この人と一緒に何かを作る時に、コミュニケーションのひとつとして、これが必要だってなると、そうだよねえ、みたいな。
あっこさん
楽しい。楽しいけど、いろいろ挑戦もありますよね。
ヒロシ
あと、いろいろな人に迷惑をかけつつ
篤史
そうだねえ(苦笑)
ヒロシ
それ込みで「いいからやれやれ」って言ってくださるのが、ありがたいですね。
篤史
そうですね。
ヒロシ
いやあ、でも、なんだかんだいっても結局本番が面白いからなんだよなあ。
あっこさん
うん。
ヒロシ
それが大きいね。
篤史
うん。
ヒロシ
さっき人生を照らすみたいなこと言ったんですけども、もうちょっと生活に近い話で、自分の家で自分の居心地のいい明かりを作るとか、特に今、4月5月で新生活になって、新しい生活環境になって、明かりで落ち着いたり、明かりで居心地が悪いというのを感じたりする人ももちろんいると思うんです。そういった、光が与える人への影響みたいなものってありますか?
あっこさん
自分の生活と光、すごく大事にしたいし、してほしいですね。今3つの選択肢があって、蛍光灯とLEDと電球と、それを上手に使ってほしいなーって。例えばトイレ。
篤史
はい。
あっこさん
トイレでゆっくりする人もいるけど、他の部屋と比べたらいる時間も短いし、そういうところはLEDでいいと思うんですよ。でも、お風呂場では、やっぱりゆっくりしたい。あったかい光の中で入った方がいいなあって。でも、そこまでではない。だからLEDの電球色みたいなものを選ぶなり
ヒロシ
ああ、ありますよね。
あっこさん
そこにほら、ボワっとした、丸いフロストのカバーとかがあったりすると、全然わからなくなったりする。
ヒロシ
柔らかい光になる、みたいな。
あっこさん
そうそうそう。とかいうのでいい。
篤史
うんうん。
あっこさん
でもやっぱり問題なのはリビングね。自分が生活する場所。台所やダイニングキッチンと寝る場所は、やっぱり、一番くつろげる場所にしたいなーとはいつも思っていて。全体を照らす照明と、局部的に明るくなる照明。そして間接照明っていうのを駆使しますね。うん。
ヒロシ
なるほど〜。
あっこさん
全体照明っていうのは蛍光灯でいいと思うんですよ。明るく「パン!」てしないと。人間の目って、暗くなると、暗いものに合わせようとするから、見えなくなるんですよね、周りが。
篤史
へ〜。
あっこさん
だから、何か物を作る作業をする時は、明るくしないと目がおかしくなっちゃう。
ヒロシ
なるほど。
あっこさん
でも、音楽を聴きながらその音楽に浸っていく時に、窓があるんであれば窓の外を見たいとする。じゃあ、窓の外を見るためには、間接照明でちょっと部屋の中を暗くして、窓に明かりが反射しないようにしないと、窓の外は見えないわけじゃないですか。
ヒロシ
は〜。
あっこさん
ね。とかいうことも考えるんですよ。
ヒロシ
はい。
ロクディムジャパンツアープロジェクト in 仙川公演の写真
あっこさん
面白いですよ。想像してください。(窓の外を指して)あっちが夜ね。
ヒロシ
はい。
あっこさん
ここは室内の光が点いています。この光がついている状態で、あの窓の外は真っ黒。でも、この部屋の中の光を消した瞬間に、窓の外は青になるんですよ。
篤史
ああ!
ヒロシ
はい、はい!今、想像できました。
篤史
うんうん
あっこさん
できたでしょ?それって、もう「光の在り方」なんですよ。だから「青」に見せたいんだったら「青になるような照明」を選ばなきゃいけないっていうか、置き方なんですよ、結局。
篤史
はいはい。
あっこさん
光の度合いと。置き方。
ヒロシ
はあ〜。
あっこさん
とか。そこまで考えちゃう、私(笑)
ヒロシ
すごい。はあ〜。
あっこさん
で、それを楽しむ。お酒飲む時に、あんまり明るくしすぎてもね、って。その焚き火を見るような感覚で、恋人と話をしたり、自分の話を聞いて欲しいんだけど、みたいな時には、窓の外は青く見えていた方がいいかなぁとか。全体ではなく、ここにいる二人だけが明るくなればいいんだよね?っていう時にLEDではないよね、とか。
ヒロシ
そうですね。
篤史
うん。
あっこさん
そうやって、光と共にある生活は大好きです。
ヒロシ
すごいなぁ。そっかあ、なんか、引き算みたいですね。
あっこさん
うん。引き算だと思う。
ヒロシ
ああ。
あっこさん
照明って引き算です。その通り。あたり(笑)
篤史
おお!当てたね(笑)(拍手する)
ヒロシ
当てちゃったねえ(笑)
あっこさん
いい照明さんは引き算をする。引き算がうまい人。若い人は皆、足していくんです。この明かりちょっと違うんですけど、って言ったら、どんどん足していっちゃう。でも、足すとわかんなくなっちゃう。さっき言った「照明なんていらないっていう瞬間がある」のと同じ。星が見えたり月が見えたりする、これの方がいいじゃん、っていう、それは引き算と同じなんですよ。究極。
ヒロシ
そうか。そうですね。つまり、照明の先に何があるかを見て、明かりを作っているわけですね。
あっこさん
うん、見てるかな。照明の先にというか─
ヒロシ
その現場と言うか「それになった時のその人」みたいな。
あっこさん
人。人が何を考えているかを想像して、その人がどういう気持ちなのか、その気持ちを引き出すため、にどんな具合だと一番気持ちいいのか、っていう事は考えます(笑)
はなしの時間#004|対談する山口明子さん
ヒロシ
ありがとうございます。
あっこさん
本当聴きたい曲、聞きたい音楽があると、目つぶりませんか?
ヒロシ
うんうん、つぶりますね。
篤史
うん。
あっこさん
耳を澄ます瞬間って、私は自然と目をつぶってしまって、集中する。それは何故かって言うと、周りが見えない方が集中できるからっていうことなんですよね。それと一緒です照明も。やっぱり何かを集中して見たくなると、周りを消して火の光(焚き火)のようになる。それを意識的にっていうか、自然にやっちゃってる感じがする。
ヒロシ
すごい、それ。すごく体験的な、身体的な感じですよね。
篤史
うん。
あっこさん
そうだね、身体的だね。自分の中に流れる何か原始的なものっていうか、人間の本能っていうか。
ヒロシ
すごいな、おもしろいな。例えば、じゃあ、恋人がいて、夜で、焚き火で照らされていて、お互いに惹かれ合うシーンになったら、しゃべっている口とか、この辺(口元から胸元のあたり)だけ明るければいい、みたいなところもあるじゃないですか。話しているところ、内容や身体に惹かれるとか、彼の熱い胸板に、彼女の胸に、惹かれるっていうような。全部が見えている必要はなくて、逆に、全部が見えないからこそいいみたいな。はあ、凄い。
あっこさん
うん、だから、その場合はロウソク一本でいい。毎日焚き火はできないから(笑)
ヒロシ
モテる気がする、これ。
篤史
それをわかってれば(笑)
ヒロシ
いや、これはすごいことだなあ。
あっこさん
逆に聞くんですけど、一日の中で、一番好きな自然光ってどのへんですか?
ヒロシ
僕、朝ですね。
あっこさん
朝?
ヒロシ
朝、お風呂入るの好きで。
篤史
そうだ、確かにそうだね。
ヒロシ
朝お風呂に入ってる時に、こう、光が差し込んでくる時が、最っ高に好きです。
篤史
それ気持ちいいかもね
ヒロシ
七時台の光とか好きですね
篤史
いやあ、いつだろうな夕方かな。夕日が一番好きかな。川沿いなんで、めちゃくちゃ綺麗に見えるんですよ。子供を保育園から連れて帰ってくる時の、ちょうど綺麗な夕日が、めちゃくちゃ綺麗なんですよ。
ヒロシ
幸せだね。
あっこさん
うん。
篤史
まあ、そういうね、状況も込みのものなのかもしれないけどね。
あっこさん
朝の光も、夕方の光も、色合いは違うけれども、斜めなんですよ。
篤史
うん。
ヒロシ
ああ、そうですね。
あっこさん
斜めの光に魅了されるところがやっぱりある。
篤史
へ〜。
あっこさん
じゃないですか?
ヒロシ
確かに。
あっこさん
なんか心が安まるのかな?その、火の光と同じようにね。
ヒロシ
僕、一度、船に乗って赤道付近に行ったことがあるんですけど、赤道だと太陽が真上にあるから、影がほぼないんです。足元に少しだけしかない。
あっこさん
へえ〜。
ヒロシ
あれ、微妙な違和感があるんですよ。
あっこさん
おもしろい。
篤史
へ〜。
ヒロシ
影が伸びないから、なんだか異世界感があって。
あっこさん
うんうんうん。面白い。
ヒロシ
だから、その斜めから差し込む光に惹かれる、心が休まるというのは、すごくわかります。
篤史
面白いね。
あっこさん
そう、なんか分かんないけど、落ち着くんですよね。私の一番好きな時間ってね、昼間から夜になる、その「架け橋」の時間。特に夏。青〜い世界になる時があるんです。あれは夕日の後かな?私のふるさとの京都の舞鶴は山に囲まれてて、山に太陽が沈んじゃうから、夕日っていうものがあんまりなかったんですよ。
篤史
はい。
ヒロシ
そっか。
あっこさん
そして、すぐ青くなるんです。町全体が。
篤史
はいはいはい。
あっこさん
その時間帯の、あの青さがすごく好きだった。
篤史
うんうんうん。
ヒロシ
そこから黒というか、夜になっていくんですね?
あっこさん
そうそう。なんか、こう、物寂しい、自分の気持ちは寂しくないんだけど、夜になっていって今日一日終わっちゃうんだ、みたいなあの感じが、すごく好きで。
ヒロシ
うんうん。
篤史
面白い。
ヒロシ
自然光の「変化が大きい時の時間」なんでしょうね、きっとね。
あっこさん
だから、この匂いを嗅いだらその時代のことを「バッ」と思い出したりする、音楽もそうですけど。それといっしょでね、光もありますよね。この光どっかで見たことある、みたい(笑)
ヒロシ
うん、あるなあ。

─続きます─

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