6-dim+ Special Contents “interview”

6時限+ はなしの時間 hanashi no jikan

#006 映画監督 伏原健之さん

1:節原監督との出会い

対談の会場は名古屋/矢場町文化系飲食店「ボクモ」。レトロな空間の中、伏原監督とロクディムの渡猛名古屋淳カタヨセヒロシりょーちんが、ドキュメンタリーや即興のことを【時をためるように】お話させていただきました。

伏原監督との出会い

お忙しいところありがとうございます。
伏原さん
いえいえ、とんでもないです。
(ロクディムを見渡して)ロクディムです。あと2人いるんですけど。男6人で活動していて…伏原監督は去年2016年に開催した名古屋・大須演芸場でのライブをご覧になっていただいていたんですね。
伏原さん
えー去年…。
名古屋
去年の6月になります。
伏原さん
あ!もう1年以上経つ。すごい面白かったです。
ロクディム
ありがとうございます。
名古屋
もう1年3ヶ月前になります。(対談は9月に行われました)
ゲストにお天気キャスターの吉田ジョージさんに出ていただいていて、その繋がりで来ていただいたんですね。
伏原さん
そうです。
橘ちあ プロフィール写真

吉田ジョージ
【東海テレビ「みんなのニュースOne」「スイッチ!」気象キャスター/気象予報士】

1970年千葉県生まれ。関西大学在学中から大阪を中心に放送タレントとして活動。33歳で気象予報士資格取得。2012年から活動拠点を名古屋に移す。講師、講演、漫談、お天気実験ショーにも取り組む。

僕たち、即興芝居をしていて、付き合いはもう20年ぐらいあるんです。で、チームを結成して10年ぐらい経っていて…というメンバーなんです。
伏原さん
はい。
今回、録音と写真を撮っているカタヨセヒロシと僕が共同主宰という形を取っていて…今日はヒロシは完全にスタッフしているんですけども(笑)活動場所は関東が中心なんですけど、名古屋淳だけ名古屋にいてという感じで活動しています。
伏原さん
わかりました。
今日は僕と名古屋淳が中心となってインタビューをさせていただきます!
名古屋
僕は東海テレビもジョージさんも含めて色々聞きたいなあというのがありまして。是非お願い致します。
伏原さん
(笑)あーわかりました何でも!
まず、対談を快諾していただいてありがとうございます。
伏原さん
いえいえ。僕も舞台見てすごいなーと思ってお知り合いになりたいと思っていたんですよ。
ロクディム
嬉しいー!(口々に)

あの…観られてどういう感想をお持ちになったんですか?僕らの即興を大須で観ていただいて、その、すごいなぁっていうのは?
伏原さん
即興は即興でまず面白いんですけども、笑いに持っていくところも勿論すごいなと思うんですけども、さらに感動するみたいな、ちょっと泣けるぞ、みたいなところまでやっていくっていうのがすごいなと思って。なんというんですかね…偶然なものを構成していって物語として成立したりするっていうのが、すごい面白いなあと思って。
渡・名古屋
ありがたい!
名古屋
終わった後に「伏原さん来られていたよ」ってジョージさんから聞いて、「すごい面白いって言っていたよー!」というのを聞いて。それで、ジョージさんと今年も大須で一緒にやろう!てなった時に伏原さんと対談してみたい!と思ったんです。
伏原さん
(笑)

淡々と撮るという覚悟。導かれた映画「人生フルーツ」

映画「人生フルーツ」公式Webサイトのスクリーンショット
映画『人生フルーツ』
ニュータウンの一角にある平屋で暮らす建築家夫婦を追ったドキュメンタリー。さまざまな社会問題を取り上げたドキュメンタリー作品を世に送り出している東海テレビによる劇場公開ドキュメンタリーの第10弾。自身が設計を任された名古屋近郊のベッドタウン、高蔵寺ニュータウンに夫婦で50年間暮らす90歳の夫・修一さんと、敷地内の雑木林で育てた野菜や果物で得意の料理を手がける87歳の妻・英子さんの津端夫婦。敗戦から高度成長期を経て、現在に至るまでの津端夫婦の生活から、日本人があきらめてしまった、本当の豊かさを見つめなおす。ナレーションを樹木希林が担当。2016年3月に放送され、第42回放送文化基金賞番組部門最優秀賞受賞したドキュメンタリー番組を劇場版として再編集した。
映画『人生フルーツ』公式サイト
©東海テレビ放送

この後に、映画の内容に触れるトークがあります。
ネタバレ!と思われる内容も含まれますので、ご注意下さい。

名古屋
僕も渡も『人生フルーツ』を拝見しました。
本当は、この映画の話をずっとしていたいくらい、ものすごく感動いたしました。ものすっごい良かったです。
伏原さん
ありがとうございます。東京で?
渡・名古屋
はい。東京のポレポレ東中野で。
伏原さん
ありがとうございます。
今年、妻と友達と3人で観たんですけど…もう号泣して(笑)
伏原さん
ありがとうございます(笑)
僕は映画の前情報、何もなしで劇場に行って。途中で修一さんが亡くなる場面とか全く予期してなくて…それで「えっ!!」て思ったのも含めて、その…人生全部が詰められているじゃないですか。自分のブログにも「めちゃめちゃ良かった」って書いてたんです。まさかその監督と対談できるなんて!昨年の大須公演も見ていただいたというのも聞いて。ありがとうございます。
伏原さん
いえいえ。
伏原さんがドキュメンタリーとして撮影されている時に、そこにある即興的なアプローチ…というか、撮影はほとんど即興だと思うんです。
伏原さん
はい。
僕たちは即興芝居をしてて、偶然に起きたことや、自然に生まれたものをどう扱うかで「物語」が変わっていくというのを「コメディ」として表現してますが、人間が「ここ」にいて「関わり合っていく」こと、それが「感動する」という要素になってるのかなーと思っていて。そこらへんの「即興」というのを軸にしながらお話ができたらと。本当は映画の話を永遠ずっとしゃべりたいんですけども、まあ時間的な問題もあるので(笑)
伏原さん
(笑)はい、わかりました。
昨年ご覧いただいた「大須演芸場」でのライブについてなんですが、ちょっと泣けるというか感動するところまで感じていただいたということですよね?
伏原さん
特にあの時はね、ジョージさんがすごい状態になったっていうのもあるんですけども(笑)
名古屋
ひとりで喋り始めて、涙するっていうのがありましたね(笑)
伏原さん
でも、ホロリとくるというか…ちゃんとドラマになっている。それがすごいなって。
今まで即興の芝居みたいなものは見られたことがあるんですか?

伏原さん
意識はしていないですけども、やっぱりライブって大抵即興っていうのがあって。そこが完璧に仕上げてるものよりやっぱりおもしろいので。本当に極端なことを言うと、ちょっとセリフ忘れちゃった時とか、「即興的みたいなもののライブ感」というものが基本的には好きなので。あの時もそれがすごく良くて。ここまでやるんだっていうのは、すごく思いましたね。
ドキュメンタリーも撮り方は色々あると思うんです。この日はこれがあってこういう事が起きるから撮りに行くっていう、いわゆる「イベント」を取りに行くという言い方をするんですけども、ということもあるし。自分は普段、夕方のニュース番組をやっているので、例えば今日、ある「講演会」があって、こういうことを喋って、お客様はこうでした、みたいな物語を作るっていうのが普段の仕事です。もっと言うと、事件や事故やそこにまつわる話を撮る、ドキュメンタリーはそういう風にしたほうが効率はいいんです。
けど、まぁ、特にこの「人生フルーツ」に関しては、そういうのはやめよう。格好つけて言うと、何気ない生活を淡々と撮っていこうみたいな。
すごいことですよね。それは、決めたのもすごいですよね。
伏原さん
と思って、まあ、僕もそんなに深く考えずに、それがカッコイイみたいな感じで始めたんですけど、まあ何も起きないし何もないので、「そこ」はずっと不安なまま編集に入ったっていう感覚はありましたよね。
本当に何も起きない日常をずーっと撮っていて、ドキュメンタリーって「いつまで撮るか?」っていうことを、どこで決めるのかなあって思ったんです。『人生フルーツ』は2年間、撮られたんですよね?
伏原さん
これに関しては、テレビ局で作っているので、年間・年度みたいのがあるので、概ね1年、短い場合は半年くらいですけども、1年取材して形にする。まぁ、予算みたいなものがあって、一応そこを目指すんですけども。これは2年かかったんです。ちょうど1年くらい経った時に修一さんが亡くなられたというのがあって、物語が大きく変わると思ったんです。で、もう1年引っ張ったって感じですね。
「もう1年引っ張りたい」というのは、珍しいことなんですか?
伏原さん
そうですね。あんまりないですよね。最初から「2年撮りますよ」っていうのならあるんですけども。
んーん。そうか〜。
伏原さん
そこは「許してくれた」というのが大きかったです。
名古屋
あそこ(修一さんが亡くなること)から物語はすごく変わりますもんね。
伏原さん
そうですね。
分かりやすい「ドラマ」があるわけではない「日常」を撮るってのがカッコイイ!っていうのは、覚悟だと思ったんです。更に、そういったことを知らない人が観た時に、そのカッコイイを届けられるようにするのはすごいチャレンジだなと思うんです。
伏原さん
そうですね…まあ、そういうの格好いいなーと思ったのは思ったけど、さっきも言った通り、やっている時は不安だらけで。なんて言うんですかね…50点ぐらいのところまでは何とかできるはずだ、っていうくらいの「経験」はあったんです。
ただ、全て撮り終わった時に、修一さんが亡くなられたという1つの大きい「ドラマ」があるにせよ、あまりいいものにできないかもしれないという思いもあったんです。でも、編集作業をしながら「あっ!こんなこと言ってたんだ!」とか、結局、修一さんはこういうことが言いたかったのかな…ということが、ようやく見えてきた部分があって。そうやって編集とかで出来上がっていく段階で、どんどんどんどん「答え」が見えていって。で、あるシーンで「手紙」が出てくるんですけど、この手紙は最後の最後に自分が「発掘」してきたんです。あの手紙があることによって、メッセージとしては凄く伝わりやすくなるっていう感じなんですよ。「ああいうこと言いたいな」と思っても、ナレーションで言うと説教くさいし、まあ、そもそも自分もあまり「お金より人です」なんていうことを自分の口からは言いたくないってのがあるので。そうすると手紙出てきて「おお!!」っていう感じで。
それすごいですよね。修一さんの手紙があった場所(パイロットルーム)はずっと入れなかった場所なんでしたっけ?
伏原さん
そうですね。なかなか本人がいる前では入りにくい場所だったんで。自由には出入りはしなかったんですけども、あそこに全ての答えがあったみたいな。導かれたみたいな感じはありました。
渡・名古屋
すごいなぁ。

─続きます─

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