正に「多才&多彩」松尾さんの豊富な知識と、ロクディムの即興への想いが入り混じったインタビューとなりました。
2012/06/06
- 渡
- あの、僕らは向こうのエンターテイメントが、即興っていわれるものが日本に来た時、もう17、8年前に来ていて。そこから僕らは14、5年、ずっとやってるんですけど。
- カタヨセ
- 向こう、アメリカ、カナダから
- 渡
- アメリカとかカナダからの、
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- おおもとは、キース・ジョンストンっていうカナダ人が即興っていうのを作って。役者の根本的な、その「人からの評価を気にしちゃったり」とか、
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- 「失敗を恐れちゃう」とか、っていうことを「どうやったらこれ解決できんだ?」っていうことで、色んなエクササイズだったりとか、ショーのスタイルだったりとかっていうのを提案して、
- 松尾さん
- はい。
- 渡
- で、それを見ていくと、今言った「あそびの4つ」のものが見事に、
- 松尾さん
- ちゃんと入ってますね。
- 渡
- 混ざっているなあ、って感じがして。
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- そして、特に日本人が、「にわか芸」っていうので、昔からそれ(即興)が「形」なってた、っていうのが、
- 松尾さん
- はい。
- 渡
- ものすごい、今、聞いていて興味深いなって、
- 松尾さん
- そうですね。
だから、日本人の国民性にはすごく合ってるというのは、例えば「お馴染みさん」が多い暮らし方をしていますね。
中国人などの騎馬民族や、あるいは狩猟民族だって、右往左往するじゃないですか。
ところが日本人はやっぱり農耕民族で、まあ、聖徳太子が言うように(笑)「和をもって尊しとなす」というね、やっぱり、こう、ずーっとみんなが、ちょっとした変化でも気づき合っているっていうこと、「阿吽の呼吸」みたいなものができるからこそ、人が違うことやったらそれに合わせていくっていう「擦り合わせ」というか、それが瞬時にできる体質が、もうニッポン人の神経の中に入ってるんだと思うんですね。 - 渡
- はあ~、なるほど。
- 松尾さん
- ところがそれが芸として成立してない。っていうか、ジャンルとしてあんまりないっていうのは、逆に不自然なことでね、
- 渡
- うんうん。
- 松尾さん
- だから、多分、もう、その先駆者って言ったらおかしいけど、その、何て言うんでしょうか、、、「スペシャリスト」としてね、うん、皆さんがこれから中心を担っていくんだろうな、と思います。
- 渡
- ホントに、そう思います。
- 松尾さん
- はい(笑)
- カタヨセ
- だから、だから(笑)
- 渡
- (笑)謙遜という言葉を知らない。
- 松尾さん
- はははは。
- 渡
- いやでも、僕は今、大学、京都の大学のほうで即興を教えたりとかしているんです。いわゆるこれから就職する子たちとかに、言ったらコミュニケーション能力がかなり低下してるし、元気がない。
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- 基本的に元気がないから、まず元気になって欲しいということで呼ばれて、その即興のエクササイズをやったりとか、去年からですけど、
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- やったりすると、まあ「日本人」で「即興で何かをしたりする」っていうことが「難しいんじゃないか」っていうイメージが、
- 松尾さん
- ああ〜。
- 渡
- あったんですけど
- 松尾さん
- はい。
- 渡
- おもしろい話で、要はそのキース・ジョンストンさんが、去年、一昨年かな?日本にまた来た時にですね、言ってたのは「日本人には難しいと思われるかもしれないけど、実は、即興でコメディやるって、日本の体質に実は合っている」
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- 「禅」っていうものをあなたたちは知っている
- 松尾さん
- はあ、はあ。
- 渡
- 「禅」とほぼ同じなんだ、
- 松尾さん
- なるほど、うんうん。
- 渡
- って言ってるわけですよ。で、特に剣術っていうのもそうで、刀を持って相手と向かい合って、で、一瞬でも何か考えてたら切られちゃうみたいな 、そんな世界でやってたわけじゃないですか。それを聞いた時に、今、松尾さんのお話を聞いた時に、ほぼ同じっていうか、からだの中で、
- 松尾さん
- うん。
- 渡
- 要は「阿吽」だとか。
- 松尾さん
- はい。
- 渡
- こういう「何拍子」ということではなくて、相手がこういったらこう返すとか、そういう即興性って、「実は」根付いているというのが、
- 松尾さん
- あると思いますね。
- 渡
- ええ。
- 松尾さん
- うん。あの、「当意即妙」っていう言葉ですよね。うん、やっぱりそこに何かが起きた時に対応するっていうのが、それがその人の命、生き死にに関わるというような、緊張感に関わることでなければね、どう持っていったってこじつけることは可能なわけですよね。
- カタヨセ
- うん。
- 松尾さん
- で、アドリブって言うけど本当に何もない「ゼロ」からは生まれないので。実は、「お茶」であろうが「禅」であろうが、その「やっとう」であろうがね、あの、自分の中に引き出しがあって、で、引き出しが整備されてる状況で、それから全てに等距離でいて、静謐に、自分の、
- ──さばのゆに電話がかかってくる──
- 松尾さん
- 電話を鳴らすという、
- 渡
- 鳴らすという、
- カタヨセ
- あははは。
- 松尾さん
- そういうことが、
- 渡
- さすが。
- 松尾さん
- とても大事だと思う。
- 渡
- なるほど(笑)
- カタヨセ
- でも、そう、このまま(電話が鳴っている状態で)話しちゃいたいんですけど。
- 渡
- ああもういっちゃいますか。このまわりがザワザワ~っと。
- 松尾さん
- ああ、でも鳴り終わるまで鳴らしちゃえ、もう(笑)
- 渡
- そうすね。せっかく鳴ったんだから。
- 松尾さん
- はい。鳴ってるから(電話が切れる)ほら切れた。はいどうぞ。
- 渡
- どうぞ。
- カタヨセ
- なんだっけ?(笑)
- 松尾さん
- あははははは。
- カタヨセ
- いえいえ(笑)。あの、等距離にいるって、とっても大事だなって。
- 松尾さん
- 「等距離」そうなんですよ。アドリブってね、引き出しの多さで自分がちゃんと安心できるというかね、アルファー波が出せる状態にいるかどうかってことが大事でね。あの、よくおじさんたちが「あれ、あれ、あの、ほら、なんつったっけ? あの俳優、あのあのあの、俳優、ほら、、、コーン・ショネリー」とかなんとか言うじゃないですか。
- 渡
- コーン・ショネリー(笑)
- 松尾さん
- つまり名前が思い出せなくなるっていうのはね、乱雑にたくさんの情報が溜まって、ボキャブラリーが多いからおっさんはそうなるんですよ。若い人は「すん」って出てくるんです。「すん」って出てくる。何でかって言ったら、アイテムが少ないから「すん」って出てくる。
- 渡
- なるほど。
- 松尾さん
- おじさんのその『コーン・ショネリー』を、ちゃんとした引き出しに入れて、いつでも開けられるように把手を整備しておけばいいんですよ。それを、まぁ、優先順位を後回しにして生きているからそうなってくるんだ。と思うのね
- 渡
- なるほど。
- 松尾さん
- おじさんダジャレが多いでしょ。
- 渡
- 多いですね。
- 松尾さん
- なんで多いかっていったら、ボキャブラリーが多いからです。すると同義語があるから見つけられる。
ところが若い人はボキャブラリーが少ないから駄洒落を思いつかない。そうすると、歳をとっている人の所業であると。ダサイ。親父ギャグだ。っていうふうになっていくんですけど。
洒落だって良くできていれば洒落であって、駄目だから駄洒落なわけですよね。
だから、良く出来た洒落が、その芝居の必然に基づいて、言葉に何か似たようなものが韻を踏むっていうと芸術的で、洒落を言うっていうとバカみたいっていうふうに思ってしまうけど、実は構造としては同じで駄洒落の地位向上っていうことを皆が考えるべきだって僕は思っているんですよ。
違うもの異なるものをスッてすり合わせて共通点を一瞬にして探すっていうことって、つまりロクディムでやっていることと同じことだと思うんですよ。 - 渡
- うんー。
- 松尾さん
- だからそこを、なんですかね、あの、あまり差別しない「そういう行為」を。
- 6ふたり
- うんうん。
- 松尾さん
- で、ニュートラルにいられるっていうことが、すごく良いんだろうなぁって思うんですね。
- カタヨセ
- 面白いです。
- 渡
- ね。
- カタヨセ
- 「めまい」ってとっても身体的だなって僕は思ったんです。「競争」という社会的なものよりも、個人的な「めまい」の感覚ってとっても身体的で。
- 松尾さん
- はい。
- カタヨセ
- 本能的って言うんでしょうかね。
- 松尾さん
- 本能的ですね。
- カタヨセ
- で、それがこの「笑い」っていうことに関してもそうで、やってても楽しい。ま、アルファー波が出てたり、ね。見てる人が笑ってる時なんてね。
- 松尾さん
- うん。
- カタヨセ
- 笑いが生まれる瞬間って、その「めまい」を皆で起こしているんだなって感覚が、なんとなくその、
- 渡
- うんうんうん。
- 松尾さん
- それは本当にね、三半器官がおかしくなるような「めまい」もあればね、ドーパミンが出るような「やる気」になるようなこともあれば、あの、麻薬用物質のベータエンドルフィンみたいなものが出るとか、あるいはアドレナリンの流れが変わるとか、色んな、
- 渡
- おおおー。
- 松尾さん
- 自分の中に「めまい」を起こす為の、あるいは外的に酒飲んで酩酊するめまいの遊びもあるし。
- 渡
- はい。
- 松尾さん
- んで、すっからかんになって、賭け事でね、ダメになって「めまい」がしちゃうっていうことも。
- カタヨセ
- ははははは。
- 松尾さん
- 色々な「めまい」があると思いますけど、それをね、色々試して遊んでみるっていう、ま、合法的な部分だけね。やってみるっていうのは価値があることだろうと。
- 渡
- 確かにそうかもしれないですね。いやー、すごいっ。
- カタヨセ
- いいね。泥酔ツアーにロクディムも入って皆が飲んでください。で、僕らも飲みながらやったらさ。
- 渡
- ははは。もう、
- カタヨセ
- 違うところに行ける。
- 渡
- 確かにね。かなりもうめっちゃくちゃになりそうだけど(笑)
- カタヨセ
- 翌日が怖いよね。
- 渡
- いや〜、面白いですね。あのー、ジョン・ベルーシっているじゃないですか。
- 松尾さん
- あのーここで(手を額にもってくる)クシャーッてやっちゃう人ですね。
- 渡
- (笑)ジョン・ベルーシさんっていうのが、インプロ、即興をやっていて『即興はドラッグより気持ち良い』と、
- 松尾さん
- ああ、なるほど。
- 渡
- って言いながらオーバードーズで死んじゃったっていう人なんですけど。
- 松尾さん
- (笑)だから『即興はドラッグより気持ち良い』っていうのは、ドラッグをキメて即興をやったから。
- 渡
- ははは。
- 松尾さん
- プラスになっているだけで。
- 渡
- ははは!そうかもしんないですねっ。
- カタヨセ
- あーユーストじゃなくて良かった。
- 渡
- 本当ユーストじゃなくて良かった。危ない危ない。
- 松尾さん
- ははは。
──続きます──