編集者。ウェブマガジン「tetoteonahama」、オルタナティブスペース「UDOK.」を主宰。
活動名【からみほぐし研究所】として、drawing(線化)による表現造作をおこなう。オルタナティブスペースUDOK.共同主宰。
2012/08/20
- 丹
- なんか、俺も、俺の描く絵って終わりがない感じじゃないですか。
- カタヨセ
- うんうん。
- 丹
- 俺、いっつも困るんですよ。ライブペイントも最後まで描いてればいいわけじゃないんで。どっかで、ここで終わりってなるじゃないですか。やっぱダラけてくるポイントとかもあるし。
- カタヨセ
- あ~。
- りけん
- あ、そう!ダラけてくるポイントって、ああいう即興の中でもやっぱあるんですか?やってて?
- 渡
- ありますね、ダラけてくるっていうよりも、先に進まない─
- りけん
- ダラけっていうか、このままどうなってくの?っていう、
- 渡
- うんうん、ずっと平行線をたどって、誰も変化が起きなくて。
- りけん
- ああ~。
- 渡
- 同じことを繰り返していると「あ~」ってなりますね。
- りけん
- でも、その「あ~」ってなったから出てくるモンもあるわけじゃないですか?例えば、その、すごいテンポよく、今日はなんか気持ちがいいなあっていうことがいい時もあるし。
- カタヨセ
- うん。
- りけん
- なんか、ダラっとしちゃって、誰も次の布石なることを言ったりボケたりもしないで、もう、こんなにグズグズになっちゃったから。
- 丹
- うん。
- りけん
- もうちょっと、場をもっていくために、ちょっと冒険しようみたいな。冒険したから、こう、最終的に「すげえ、あれ、良かったー!」、みたいな。
- カタヨセ
- うん(笑)
- りけん
- だから、何が楽しくて、何が盛り上がって、何がスゴイのかっていうのは、全く、もう、ホントに筋書きもないし。
- カタヨセ
- うん。
- 渡
- うんうんうん。
- りけん
- だから、ホント、お客さん次第っていうところもやっぱり。
- カタヨセ
- そっすね。
- 渡
- うん、そうですね~。
- りけん
- だって、どんだけね、すげえボール投げたって「ほぉ~ん」っていうリアクションだったら、もう、どうしようもない。でも、もしかしたら、ヘナチョコボール投げたら「あ、今のボールの飛び方可愛い~♪」みたいな。「そこ!?」みたいな。
- カタヨセ
- あははは。
- 渡
- うん。
- 丹
- 分かんないっすもんね。そりゃ分かんない。
- りけん
- うん。だから、結局なんでも表現ってそうですけど、自分が「これスゲエべ」って思ったものが通用しなかったりとか、お客さんが求めているものが違った時にどういう風に気持ちを切り替えたりとか。
だって例えば、ギターリストがエレキギターを超絶テクニックで「ここスゲエよ」ってやってるところだったらみんな「わー」って盛り上がるけど。例えば、琴とかで、すっごい、この「響き」が、めちゃくちゃスゴイ! - 丹
- はあ〜。
- りけん
- でも、分かる人にしか全く分からないっていうもの。やっぱり、その、即興劇とかも「今のすごかったなー」とかっていうのが、あるわけじゃないですか。
- 渡
- うんうん。
- りけん
- そういう所って、やっぱり、出したくなるっていうか─
- 渡
- (小声で)うんうんうんうんうん。
- りけん
- と思うんですよ。そういう「欲」って、おさえて…まあ、出して、その結果、いいものが出来る時もあるし。
- カタヨセ
- うん。
- りけん
- そうじゃない時もあるし。
- 渡
- うん。
- 丹
- お客さん次第じゃないですか?
- りけん
- そういうことだよね、ホントね。
- 丹
- うん本当に。
俺なんか、音楽のイベントで絵を描くじゃないですか。全然、ジャンルが違う。 要は、音楽を聞きに来るわけじゃないですか、人は。で、俺、最初にライブペイント行った時にすごい恐かったのが「音楽はスゲエいいのに、何この人、何こんな絵を描いてんの?」って思われたら、もう、みたいな。 - 渡
- うんうん。
- 丹
- 俺、音楽が好きで、その人の聞きに来てて「何でこの音楽でそんな絵を描いてんだよ」って、自分が客の立場だったら、多分、思うと思って。
- カタヨセ
- あ〜。
- 渡
- う〜ん。
- 丹
- そう思われたら終わりだし。2時間とか描いてる中で「だいたい、この人の絵はこういうふうに終わるんだろうな」って思われたらもう終わりで。もう、誰も見てくれないし。やっぱ、こう、描き方をその場で変えて、ああ、これじゃダメだと思って、変えたりとか。後ろから見られてるんで、(観客の)顔も分かんないし。
ASA-CHANG(左)主催の即興バトルに臨んだ丹(右)
photo : tetoteonahama
- 渡
- その空気を感じながら
- カタヨセ
- そうだよね。
- 丹
- 空気は、何か恐かったっすね。
- 渡
- ああ、それはそうだ。
- 丹
- なんか、近くで描くのか、広く描くのか。その場で、もう、パフォーマンスしなきゃいけないんで。ただ描いていればいいんじゃないんで。
- カタヨセ
- うん。
- 丹
- 見せ方とか。
- りけん
- う~ん。
- 丹
- その恐さっていうのが、舞台とかだと、どうなんですかね?やっぱ、お客さんの表情とか見ながら変えていくんですよね、きっと。その、次の手っていうか、言葉とか身振り手振りとか。
- カタヨセ
- うん。そうっすね、なんか俺の感覚だと、すごくそれ分かるんですよ。分かるっていうか、同じだなーって思って。僕の中では、じゃあ何を1個大事にしようかなあっていう、1本の「芯」を多分入れてるんだなあ、って思って。
- 丹
- うん。
- カタヨセ
- 即興の芝居っていうパフォーマンスをやる上で、これは譲れないから、ここは外さずに、でも、これを外さないで分からない人にはしょうがないっていうところも。
- りけん
- う~ん。
- 丹
- そういうのがあるんですか、基準じゃないけど。
- カタヨセ
- 基準みたいなのが、多分、僕にはあります。
- りけん
- それはどういうことなんですか?
- カタヨセ
- えっ?!
- 丹
- (笑)感覚的なところ。
- りけん
- ねえ、でも、
- 渡
- 聞きましょう!
- 一同
- (笑)
- りけん
- そこ、聞かないと。
- カタヨセ
- (渡を見ながら)あるでしょ~、渡さんにもあるんじゃないの(笑)
- 渡
- あっはっは。
- カタヨセ
- 何だろうなー。
- 丹
- 譲れない部分っていうことですよね。
- カタヨセ
- そうですね……(小声で)なんだろうな……
- りけん
- 丹ちゃんは、あるの?やっぱり。
- 丹
- 俺は「分かんない絵」を描いているのが、そうじゃないですか?例えば、人(人物の絵を)描けばいいんだし、分かりやすい絵を描きたかったら。
- 渡
- そっか。
- カタヨセ
- そうだ。
- 丹
- そうしたら、人(人物の絵)は多分面白いですよ。飾りたくなりますよ。欲しくなりますよ。俺、だってそういう絵じゃないんで。「何描いてんの?」「何描いてんですか?」って言われる絵じゃないですか。
- りけん
- っていうのを、やっぱり描きたいって。
- 丹
- いや、だけど、それで「なんかスゴイ」って思わせたいっすね。
- カタヨセ
- うん。
- 渡
- うんうん。
- 丹
- 自分も裏切りたいんで、自分でも描いている自分の想像を超えたいんで。
- カタヨセ
- うんうん。
- 丹
- 自分が予想がつかない着地点にいきたい、っていう「もがき」もありますけど。
- カタヨセ
- うん。ウチら、なんだろうな~。ウチら、って今まとめちゃったけど。
- 渡
- うん、ゆずれないもの。
- カタヨセ
- ゆずれない所があるんだなー、きっと、俺。
- 渡
- 自分の中の、だから、あれじゃない?だから、先が全く分からない状態とか、何か、もう、想定内に納めようとか。
- りけん
- う~ん。
- 渡
- よくさ、自分の中で「自由じゃない空間」って、絶対に作りたくないじゃん?
- 丹
- う~ん。
- 渡
- そこは何としても死守してるじゃん。
- カタヨセ
- うん……
- 渡
- それ?(笑)
- カタヨセ
- あははははー、ありがとう、ありがとう。
- 丹
- (笑)
- 渡
- なんだろう?
だって、即興の表現としてはお客さんが喜ぶ、まあ、ヒロシなんか特に、表現の中でも、なんか、こう、はっきり分かりやすく説明するんじゃなくて「ここ」いくじゃん。お客さんのギリギリ。シーンが終わった後に、あ、そういえば、最後のひと言って、アレ、ああなってんだ、みたいな。 - カタヨセ
- あ~(笑)
- 渡
- そのセンスがあるじゃん。絶対、俺は100まで説明するんですけど。これこれ、こうで、こうで、こうでって言って(笑)
- 丹
- あ~。
- 渡
- で、ヒロシは、1っこ、スコーンって入れていって、「実は、あれ、あそこから来てるんだよ」って後で言われて、「エーッ!?」あれ、あそこからとってんの?みたいな。
- りけん
- あ~。
- 丹
- へ~。
- 渡
- ウチらですら気づかないことも、時々、言うんですよ。
- カタヨセ
- 恥ずかしい。独り遊びだ(笑)
- 渡
- その凄さとか、あと、即興の面白さっていうのは、こっちから教育しなきゃいけないなー、って思うんですよ。その、お客さんが分からないかもしれないから。今の分かりますか?今の、これこれ、こんなんですよ、って
- りけん
- う~ん!
- 渡
- で、分かる人は、もうすごく最初っから分かるし、でも、分かんない人は、分かんなくても「面白かったー」でもいいんですけど。
- りけん
- そっか~。
- 渡
- それはいいんですけど、でも、ウチらはそこ、第一線行ってるし、それは言わないと、伝えないと分かんないし。
- 丹
- うんうん。
- 渡
- だからワークショップもあるんですけど。
- りけん
- なるほどな~。
- 渡
- でも、ライブの中で、エンターテイメントの中でも伝えられるんだったら、伝えていかないと。(見方が)育っていかないっていうか。
- りけん
- う~ん!うん!観客を育てるのって、すごい、こう、大事ですよね。
- カタヨセ
- あ、それは大事だと思います。
- りけん
- なんか、こう、この間(昨年の7月の公演)もそうだけど、「こういう感じなんですよロクディムのは」っていうのを、公演の冒頭に少し短めのヤツとか入れてって、で、お客さんが「こういうものなんだ、こんなに楽しいものなんだ」っていうところのギアが変わって、はじめて最後の一体感っていう、
- カタヨセ
- うんうん、そうっすね。
- りけん
- いやー、よかった、みたいな。で、お客さんは、多分、知らず知らずのうちに、即興のそのパフォーマンスの楽しみ方を教えてもらってて、こう、入り込みつつも、ちゃんと学んでいるっていう。だから、多分、リピーターが多いっていうか。
- 渡
- うん。
- りけん
- もしかすると、今回も「あ、ロクディム来るんだったら、俺、行くわ」っていう。で、また、裏切られて、いい意味で。
- 丹
- そう、裏切られたいんですよ、多分、見る人はね。
- りけん
- そう。だから、多分、即興って、多分、正にその裏切りの芸術みたいな。だって─
- カタヨセ
- 裏切りの芸術。
- 渡
- 裏切り。
- 丹
- カッコいいフレーズですよね、今の(笑)
- 一同
- (笑)
- りけん
- なんか(笑)、だって俺なんか、前回のしか知らない。(丹くんを見て)今回の知ってるわけでしょ。
- 丹
- うん。
- りけん
- だって、前回の全く参考になんないもん。多分、こんな感じかな?前回あった、なんか「太鼓」が─
- 渡
- 太鼓(笑)
- りけん
- 太鼓たたいたりとか(笑)
- カタヨセ
- あははははー。
- りけん
- 色々あったじゃないですか(ニヤニヤ)
- 渡
- ありましたねー、やりましたねー(笑)
- カタヨセ
- ありました(笑)
- りけん
- そういうのがあるから「あんな感じなのかな?」とかが通用しないっていう。
- 渡
- うんうんうんうん、そうっすね。そん時の空気次第で全く変わるから。
- りけん
- うん。うん。それがねえ、やっぱり、こう、面白いんだな。本当に想定内に納めない。でも、自分の中では、例えばどのぐらいの時に、終わりって意識するんですか?
- 丹
- ショーの?
- りけん
- うん、あの、例えば、あるパフォーマンスの終わりを意識して、こう、なんだろうな。やっぱり自分の中の、丹君なんか自分も裏切りたい、ってね。
- 丹
- うん。
- りけん
- 自分の想定を越えるものが出た時に、やっぱり─
- 丹
- どう壊すかを考えてます。
- りけん
- だから、むしろ、最初とか中盤の時に「こう納まったらいいな」とか「納まった!」のほうが、いいのか?
- 6ふたり
- うん。
- りけん
- なんか「こう納めようとした」けど、ぐちゃぐちゃになっちゃったけど、結果オーライだな、とか。ま、色んなことがあったりするじゃないですか。
- 6ふたり
- うんうん。
- りけん
- だから、お客さんは常に想定外に裏切られ続けるけど、自分の中では「裏切り」っていうのは、どの程度、まあ、程度の問題じゃないかもしれないですけど、考えながらやってるのかなーって。
- カタヨセ
- (即答)考えてないです。
- 渡
- ふふふふ(笑)裏切り。
- カタヨセ
- 裏切りとか、考えてないですね。
- りけん
- ある程度、こういうふうに持っていきたいっていうのが、どっかでこう、
- カタヨセ
- いや、いや、それが、ないのかなあ。
- 渡
- ないのかもしれない。
- りけん
- ない!
- 渡
- 常に、お客さんと一緒になって、メンバーと一緒になって、やってて、その瞬間その瞬間やってたら「あ!ここで終わったらいいじゃん」っていうのが見える。
- りけん
- あ~ぁ~!
- 渡
- 発見する、あの、終わりを作るんじゃなくて、見つけるみたいな。
- りけん
- あ~。
- 渡
- で、フエをふく、みたいなことなんですよね~。だからウチらもいつ終わりが来るかなんて想定ひとつもしてない、っていうか。
- カタヨセ
- 想定はしてないね。
- 渡
- うん、見える。
- 丹
- う~ん。
- りけん
- なるほどな~。でも、見えるのって、やっぱりこう、普段の稽古なり。って、即興の稽古ってどんなんですか?
- 渡
- 稽古は─
- りけん
- 何をすればいいんですか?
- 渡
- 必要ですね(笑)
- カタヨセ
- 何をすればいいんですか?渡さん。
- 渡
- よく言われます、よく言われます(笑)
- 丹
- (笑)
- 渡
- パターンを決めるんじゃなくて「うまくなるため」っていうよりも「自分の中でなんでもアリ」っていう状態をちゃんと作んなきゃいけない。どうしても、特に経験者は「うまくなりたい」とか「こうしたい」とか欲をかくんですね。
- りけん
- はぁ~。
- 渡
- そうした瞬間に、こうしたい以外のことを全部排除しちゃうから、
- 丹
- うんうん。
- 渡
- ちっとも面白くない、答えがひとつになっちゃう。
- りけん
- うーん。
- 渡
- ウチらがやらなきゃいけないのは、いつも「新鮮で」いつも「自由で」っていう状態でいないと、例えばよかったライブがあってそれを追おうとしたりすると、例えばウドクがスゴく盛り上がったから「その時みたいに」って思ったライブはよくないです。
- りけん
- う〜ん。
- 渡
- だからさっさと忘れた方がいいっていうのと、「相手が何を求めているのか」っていうことだったり、ストーリーとして結末をつける時に「最初にあったものを持ってくる」ってことになると、円が完結した感じがして物語として終わりになるみたいな、こととかを学んで、身体に叩き込んで、何も考えずに運転できるみたいな状態にまでもっていかないと。やっぱり─
- カタヨセ
- 自動車?
- 渡
- そう、自動車とかと一緒で、「今ここで1速に入れて」とか考えているうちに(他の)仲間は違うことやってるし。
- りけん
- う〜ん。
- 渡
- 考えてたら遅い。脳みそ経由してたら遅すぎるんで、常に身体で、「無我」の状態でやりとりできるようなレッスンをします。
- りけん
- それは例えば、自分の中にいっぱい、その演じられる、例えば「おばちゃん」とか。「おばちゃん」の中にも、いろんなおばちゃんがいるわけじゃないですか。そういうのを、使い分けられる「引き出し」みたいなものなのか、色んなシチュエーションとかストーリーみたいなものを、自分の中にストックしておくっていう感覚なのか。
あとは、例えば演技とかだと「お芝居的」な「演技力」みたいなものがあるわけじゃないですか、やっぱり。そういうものも、やっぱり、どっかで稽古もしなくちゃならないでしょうし、どういう練習方法っていうか。例えば、本を読んだりすることも、もしかしたら─ - 渡
- もちろん、そうです。映画を見ることもそうだと思うし。物語、なんでもそうですけど、人の話しを聞くでも「そういうストーリーがあるんだ」とか「そういう考え方があるんだ」とかって。でも、ロクディムとしての演技の稽古は、多分、ないです。けど、
- りけん
- あ〜。
- 渡
- 自分たちで、それぞれが、楽しみながら(笑)
- カタヨセ
- 別にたいしたことしてなくて(笑)
- 渡
- たいしたことしてない(笑い)
- カタヨセ
- 遊びなんだよね。
- 渡
- あそび、ただのあそび。
- カタヨセ
- ウチらは(笑)
- 渡
- やったことのない「おじいちゃん」にチャレンジしてて、うまくいってない時も、それはそれで笑える、みたいな(笑)
- りけん
- あ〜。
- 渡
- ウチら、やっぱりコメディだから、そこを突っ込めたりとか、それを笑い合いながらできるから。常にみんなの中で自由を確保して─
- りけん
- 例えば、おじいちゃんの演技をしたとする、と。おじいちゃんの演技が、超ヘタクソで、「お前、おじいちゃんの演技下手だな」とかって言っちゃうのも、もしかしたらッ─
- カタヨセ
- アリですね(笑)
- りけん
- アリじゃないですか。
- 渡
- アリです。そういう、下手なおじいちゃんをやっているのを使って、そういう物語を作っていく。
- りけん
- あ〜あ。
- 渡
- だから、失敗がない、それをちゃんと使ってあげれば。
- りけん
- …なるほど。
──続きます──
「たんようすけ/untangle.」作品
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