編集者。ウェブマガジン「tetoteonahama」、オルタナティブスペース「UDOK.」を主宰。
活動名【からみほぐし研究所】として、drawing(線化)による表現造作をおこなう。オルタナティブスペースUDOK.共同主宰。
2012/08/21
- カタヨセ
- さっきのトレーニング・稽古の話ですけど、猛の話を段階として分けると、色んな段階にまたがった全体の話をしていて、すごい初歩的な時には「失敗していいんだ」っていうところ、まず大事です。
車の運転を、僕も久しぶりにすると、はじめはひとつひとつ確認しながらになるじゃないですか。で、その状態で、自由です(運転できます)って言われても、全然自由じゃないし。まず自由の「無限の自由」に苦しむし、じゃあ、何をしたらいいんだろうってなるので、そこをできるだけとっぱらっていこうと。
そして、失敗しないと気づかないことって、あるじゃないですか。これって、言葉で言うとスゴイいいんだけど、なかなか伝わんなくて。ついこの間、タイのチェンマイから帰国する途中、トランジットでチェンマイからバンコクで羽田行きの飛行機に乗り換えるんですけど迷ってしまって。とりあえず、こっちかな、って行ったら、間違ってバンコクからタイへ入国するほうに行っちゃって。 - りけん
- うん。
- カタヨセ
- で、(羽田は)あっちだ、って言われて。これは、僕にとって失敗なんですよ。羽田に行きたいんだから。だけど、その失敗をしないと、羽田行きの飛行機の場所を教えてもらえなかったからそれは失敗しなきゃいけない。
失敗が、自分にとって「お前、最低なヤツだね」とか「才能がないね」っていうことではなくて(笑)。そこでの自分の状態を知る「気づき」の1個だ、ということが「失敗の効果」。それがないと、どこにも行けない。まず、フラットにして「自由になっていいんですよ」って言うと、自分がどんなおじいちゃんやってもよくなる。「おじいちゃん」っていう「モデル」をするのではなくて、その状況に合ったおじいちゃん、病院にいるおじいちゃんなのか、ソープに行くおじいちゃんなのか─ - りけん
- うん。
- カタヨセ
- 全然違うおじいちゃんになる。
- りけん
- うんうん。
- カタヨセ
- で、ソープに行くんだけど、すごいヨボヨボしててもいいわけです。
- りけん
- うん。
- カタヨセ
- 「最期に…」って。
- 渡
- 病人だけど、元気なおじいちゃんでもいいし。
- りけん
- うん。
- 渡
- っていうふうに、「モデル」の中に自分を当てはめるよりは、シチュエーションの中に、必要なものを見つける作業なのかな、って。
- 渡
- そうだね。
- カタヨセ
- 段階としてね。
- 渡
- そうだね。
- カタヨセ
- 自由でよくて、失敗してよくて、次に、じゃあ、このシチュエーションの人を演じること─
- 渡
- だから、多分、自分の枠を超えるんだと思う。
- カタヨセ
- そうそう。
- 渡
- 普段のヒロシでは絶対にやらないことを(笑)
ショーの中でやったりとかするのは、ああ、相手のためだなあ、って思うよね(笑) - カタヨセ
- 恥ずかしいねえ(笑)
- 渡
- 自分だったら、絶対にそんな表現したくないはずなのに(笑)
今、仲間を助けるためにとか、このシーンに必要だから。 - りけん
- あ〜あ。
- 渡
- 自分は、なんか、鳥になったりとかカッパになったりとか、するわけじゃん(笑)
- りけん
- そんなこともあるわけですね。
- 渡
- 即興なんて、何がどのタイミングでどうなるか分からないから、自分がコレやりたいとか言ってたら、ちっとも助けられない、っていうか。
- りけん
- あ〜。
- 渡
- お客さんにとって大事なのは、あなたの「好き・嫌い」とか、あなたの「プライド」なんて関係なくて、お客さんが見たいものなのかどうか、っていうこと。それを、表現できないとイカンし、そこで失敗するの怖がってたら、やったことないからって怖がってたら、ダメなんで、やってみようよって。
だから、一番最初、特にビギナーの人には難しい「失敗しましょう」って。 - りけん
- うん。
- 渡
- 失敗を恐れちゃうから、どうしたって。上手くやりたいし、正解出したいし、何をするにも「自分のアイディアってどうなんだろう?」って思ってしまうから、常に自分を検閲してたりするから、そこをクリアにしておかないと。失敗に対する姿勢を変えなきゃいけない。失敗したら「ラッキー」って思わなくちゃ、だって成長できるんだもん。
- りけん
- うん。
- 渡
- だから、たくさん失敗してくださいね、って言って、で、みんなで安全な空気を作った上で。
- りけん
- あ〜。
- 渡
- 大胆に!じゃないと大胆に飛び込めない。
- りけん
- なるほど。
- 渡
- ウチらはワークショップじゃなくてライブなので、(ウチらを)誰も知らないところに行って「ロクディムでーす」って言って、ウチらで自由で安全な状態を確保できるように築いているかもしれない。
- りけん
- あとは、その、大胆になれるってこと。まず、失敗、僕2通り今面白いなと思ったのはさっきも言ったように「失敗してもいいんだ」っていうことと別に、失敗した時に「拾ってくれる」っていうことの安心感、みたいな。
- カタヨセ
- うんうん。
- りけん
- だって、まず自分の考えの中で「失敗」は「気づき」になるわけだからいいんだよ。ましてや、失敗してもそれが、また面白いことに膨らむかもしれない。で、その失敗した時に、逆に言うと「失敗(の後)に何を持ってくるか」が、その人のこう、深味みたいな、演技力なのかパフォーマンス力なのかアレですけど。ことの安心感、みたいな。
- 渡
- うん。
- りけん
- 滑っちゃって、しーんとなった時に、もう1回拾おうとしたら、また滑ってしーんってなったとしても、その次にまたやりゃあいいんだっていう、
- カタヨセ
- あはははは、うん。
- りけん
- で、最終的にね、どういう風に持っていって、ある程度最後に「おもしろかった」ってなれば、この失敗がなきゃ「これ」がなかった。だから失敗が必要なことになってくるわけじゃん。その安心感っていうのは、チームの中でも必要ですよね。
- 渡
- 必要、必要。
- カタヨセ
- 失敗と裏切りって、とっても似ている。
- りけん
- うん、うん。
- 丹
- 俺も、絵、描いてておもしろかったのが、初めて描いた時には、やっぱりこういう絵にしたいっていう気持ちがあって。ただ、やっぱり失敗する。当たり前ですけど、真っ暗な中で絵描いてるから。「あー、やっちゃった!」みたいな(笑)
- カタヨセ
- うんうん。
- 丹
- でも、それ見せたくないじゃないですか。
- 一同
- (笑)
- 丹
- なんか、もう、ダメだ!っていう空気を出したら、もう。
- カタヨセ
- うんうん、そうだよね(笑)
- 丹
- それをごまかそうとしている自分もいるし、どうしようって言いながら、ただ描いて、最後終わった時に見ると、その失敗しているところがおもしろいんです。
- 渡
- うんうん。
- カタヨセ
- う〜ん。
- 丹
- なんか、こう、自分にない「何だろう?」っていうのがそこにあって、
- りけん
- うん!うん!
- 丹
- なんか、それをさっき聞いてて思いました。あ〜っ、こういう失敗もあるなあ、って。ただ、失敗の度合いもあるじゃないですか?(笑)
- カタヨセ
- (笑)
- 丹
- 絵だったらですけど、枠の中で「なんでもいい、やっちゃえー」ってなっちゃうと、実はまとまっちゃって。何でもやれば面白そうに見えて、やって楽しいんだけど、結果見た時に「んっ?」って。面白い部分はあっても、なんか、こう、やっぱさっき言った「軸」かもしれないけど。
- りけん
- うん、うん。「軸」があると、ちゃんと失敗しても「まとめられる範囲の中で失敗できる」ようになってる、っていうか。
- 丹
- そうそう。
- りけん
- なんか、転んだ時に、
- 丹
- そういう時に、「軸」が、
- りけん
- 怪我をしないような転び方が出来てるっていうか、
- 丹
- うんうん。
- りけん
- ホント、スポーツ的なんだよ、多分。
表現してても、例えば、ホントに実力次第っていうか、稽古してないと失敗した時にもうどうしようもない、完全に自分の今までのコンセプトから外れてる。例えば丹ちゃんが「失敗した」と思って描いた線もお客さんが「あ、失敗は失敗なりに丹くんらしいね」とか。 - 丹
- そういうのありますね。「俺らしい」って逆に言われて、ああそうなんだって(笑)
- りけん
- そう、意識的に失敗って出来ないじゃないですか。
- カタヨセ
- うん。
- りけん
- 絶対に失敗って意識的には出来ない。無意識のうちに失敗しちゃうんだけど、その失敗が、自分のこういう、外側で失敗しちゃうのは、多分素人っていうか、まだ、ダメなうちっていうか、
と言いながら、イラストを描いていきます。
- カタヨセ
- うんうん。
- 丹
- そうかもしれないですね。
- りけん
- で、失敗しても、このぐらい近くて「ここ」だから面白くなる失敗っていうか。円の中の「ここ」だと、ちょっと想定内。
- 丹
- でも、それ(自分の円)を広げていく作業ってのもあるじゃないですか。
- カタヨセ
- そうそう、今、僕もそう思った。
- 丹
- 俺、やっぱり、すげえ絵とか見たあとに引きずられるんですよ、すごく。
- カタヨセ
- へ〜。
- 丹
- ジャクソン・ポロックかなんか見に行った時に。
- カタヨセ
- あ〜あ、はいはい。
- 丹
- 衝撃をうけて。自分とはちょっとテイストが違うけど。その後に絵を描いてると、描けない。自分の絵じゃなくて。
- りけん
- あー!
- 丹
- 真似はしてないはずなのに、引きずられてて、なんだこりゃって。
- 渡
- 無意識に入っちゃってんだね。
- 丹
- それが嫌で嫌で嫌で嫌で。
- りけん
- あ、嫌なんだ?
- 丹
- 引きずられるの嫌で。
- 渡
- 影響受けて。
- カタヨセ
- うん。
- りけん
- でも、やっぱ、「こう」なってるわけだよね。
- 丹
- だから、ひきずられてて、見た人に「あ、これ、ジャクソン・ポロックの真似してるね」って思われたら、もう、嫌じゃないですか(笑)。そうならないように、自分の中で、じゃあ、ジャクソン・ポロックの何をいいと思ったのか。
- カタヨセ
- はいはいはい。
- 丹
- 何を自分のものにするか。それは「ここの作業」(広げる作業)が、あって、
- りけん
- なんか、話を聞いてると、例えば「ここ(自分の表現)」があって、結局、失敗しようが衝撃を受けようが、やるのは、失敗するのは自分だし、衝撃をうけるのも自分だから。
- 丹
- そうですね。
- りけん
- 結局、もっとおっきい自分っていうのがあって。
- 丹
- そうそうそう。
- りけん
- その中で、だから「これ(自分の表現)」が、もしかしたら、意識的なところなのかもしれない。
- 丹
- ああ、そうかもしれない。
- りけん
- 無意識みたいなもっとでかい輪があって、色んなところの、失敗とか裏切りとかに引きずられたりとか。
- カタヨセ
- うん。
- りけん
- で、失敗が、例えば突拍子もない所に行っても、こういうふうに(自分の枠を広げて、自分の中に)もっていけるかどうかってことなんでしょうね、多分。
- カタヨセ
- うん、うん、うん、うん。
- 渡
- うん。
- りけん
- やっぱり、おさめるんじゃなくて、ここに来た時に少しずつこう広げていく、で、次はこういうふうに広げていく、で、最終的には丸が広がっているんじゃないかな。
- カタヨセ
- うんうん。
そこへ「カツオとイナダを仕入れた!」と、2人の男性が入ってきました。
実はこの対談の時、ロンドン在住のファッションデザイナー「川西遼平」さんが、いわきの「地域活性プロジェクトMUSUBU」と共同で進める、テキスタイルでロンドンと福島をつなぐ「LONDON-FUKUSHIMA Project」のため UDOK. にて1ヶ月滞在して作品作りをおこなっていたのです。
「カツオとイナダ」を仕入れて来た2人の男性はこのプロジェクトを一緒におこなっていた、川西悠太(撮影)さん、関根渉(パタンナー)さん。
カツオパーティー第2弾と言って川西遼平さんがカツオをさばく中、対談が続きます─。
- 丹
- 遼平くんのこの服とかも、だって子ども達に勝手にやらせてるわけじゃん。自由にやらせて、ロンドンの子どもと日本の子ども、全然感覚が違うのに、結果、遼平くんっぽい作品になるんだなっていうのを、横で見てると、これも即興っていうの─
- りけん
- うん。
- カタヨセ
- そうですね。
- 渡
- そうっすね。
- りけん
- うんうん。
- 丹
- それは、だから、俺のものにしたっていうか、なんていうかな、
- りけん
- うん!うんうん。
- 丹
- それでも「俺の作品だよ」って言える人っているじゃないですか?
- りけん
- うん、わかるわかる。
- 丹
- 誰に何されても、結果的に、自分のもの(作品)として出す、出せる。そこって、さっきの枠を広げたりとか。「これはしないで欲しい」っていうのが、多分あるとは思うけど、遼平くんにも。だからある程度そこは、コントロールさせてあげて、っていうか、さっき言ったコントロールするところ、させないところ。
- カタヨセ
- うんうん。
- 丹
- 素材なのか、カットなのか、わからないけど。
- りけん
- コントロールするとこと、しないところって、やっぱり即興の中で、だって全部「箍(たが)」を外しちゃったら、どうしようもないわけじゃないですか。
- カタヨセ
- 変態ですね。
- 丹
- 変態ですね。
- 一同
- (笑)
- りけん
- だから、こういう区別の仕方はいいのか悪いのかわからないんですけど、ちょっと単純な図式にしすぎかもしれないけど、お客さんとか、受け手のために作るのが例えば「デザイン」だとするじゃないですか、広告とか。
- カタヨセ
- はい。
- 渡
- うん。
- りけん
- 例えば、まあ、芸術(アート)っていわれるものが、自分が完全に出したいもの、もう、お客さんがどう思おうと俺はコレがしたいんだ、っていう。
今までは「デザイン」ここに「アート」と、2極だったのに、多分、即興ってこんな、 - 丹
- あ〜、でも。
- りけん
- なんか、こんな感じ(と図式していく)
- 丹
- そうかも。
- りけん
- ここに即興がある。
- カタヨセ
- お〜っ。
- 渡
- すごい(笑)
- りけん
- ほら、だって、即興って結局、お客さんとか誰かとのコミュニケーションで成り立っているけれども。
- カタヨセ
- そうですね。
- 渡
- うん。
- りけん
- 常にそういう「裏切り」裏切りの連続って言う意味では、アートの領域にも入ってくるし、
- 丹
- 確かに。
- りけん
- かと言って、デザインに寄りすぎて、お客さんの見たい完全に「俺ってすげえべ」っていうことやっててもダメだし、っていう。
- 渡
- そうそうそう。
- りけん
- デザインとアートの「間」ではないんだけど!
- 丹
- うん、確かに、ちょっと、なんか、ねじれてるかもしれないっすね。
- りけん
- ねじれてるか、なんか、このあたりにあったり、このへん、こんな(と言いながら線を足していく)─
- 一同
- (笑)
- りけん
- よく分かんないけど、だから、そういうものなんだろうな。
- カタヨセ
- うんうんうん。
- りけん
- 俺って知らない物事とかを出来るだけ自分の今までの人生経験の中で、やってきた言葉の中で理解しようと、まあ、それってしょうがないじゃないですか。ただ、丹くんによく言われるのが「リケンさんは、なんか、すぐにこう型に…」
- 丹
- ああ、カテゴライズする(笑)
- りけん
- カテゴライズするって、
- 渡
- あははは。
- 丹
- この人こういう人、この人こういう人、みたいに、
- カタヨセ
- あ、はいはい。
- りけん
- 僕は多分ずっとマスコミで仕事していたので、大体、この人はこういう人だろう、っていうふうに「しないと」、おさまんない、っていうか。
- 丹
- うん。文章にまとめられないでしょうね。きっと。
- りけん
- そう。
- 丹
- 取材する時も、多分。
- りけん
- そう、自分の中で一番よくないんですけど、多分こういう感じなんだろうなって。まあ、インタビューなんかも、実はけっこう即興に似ているところがあって、
- 丹
- そうですよね、そうそう。
- カタヨセ
- そうだと思う。
- りけん
- で、テレビの時は完全にレッテルを貼るんですよ。
- 丹
- こういう言葉を引き出したいっていうことですよね?
- りけん
- お客さん、テレビを見ている人は、きっとこういう言葉を言ったら喜ぶだろうなっていうことがあって、それを言わせるだけのインタビューっていう、完全に想定内。
- カタヨセ
- うんうんうん。
- りけん
- だけど、おもしろい人にインタビューすると「うわ、これ、全然まとめんねー」って。
- 一同
- (笑)
- りけん
- そう、そう。あ〜、なるほどって。でも、ディレクターとかに「早く、もうテープ回して、交換して2本目だぞ」みたいなプレッシャーがあって。
- 渡
- ああ、そっか。回さなきゃいけないし。
- りけん
- で、そこで、そこで、仕事だからこんなもんだっぺ、っていって終わっちゃうとやっぱりダメ。
- カタヨセ
- あ〜。
- りけん
- 想定内だから。
- 渡
- うんうん。
- りけん
- 本当は回したい、ギリギリまで。で、一番おもしろいインタビューって、最後にカメラの録画を切った後に本音が飛び出してきたり、とか。
- カタヨセ
- ああ〜。
- りけん
- それがあるから、俺はテレビじゃなくて書く方がインタビューとしておもしろい。
- カタヨセ
- うんうん。
- りけん
- で、やっぱキャッチボールなんで。
例えば、野球のヒーローインタビューとかで、「ナイスゲームでした」って…。何も聞いてない。「ナイスゲームでした」としか - 一同
- (笑)
- 丹
- た、確かに(笑)
- 渡
- なんだろう(笑)、はい、はい、しか言えないよね(笑)
- りけん
- そう、「ナイスゲームでした!」
- 丹
- ちょっと、それ、おもしろい(笑)
- カタヨセ
- たしかに(笑)
- 渡
- 感想だけ言って、
- カタヨセ
- これ、なにかで使おう(笑)
- 丹
- それ、今、俺も思った。何かで使おう(笑)
- りけん
- だから、なんかもうね、アナウンサーとか「コレを言ったら喜ぶんだろ?」っていうのだけでも、なんか、ホント済んじゃう。インタビュー慣れしてる人って、例えばじゃあ、超大スターにインタビューします。もう「こんなこと言っておけばいいでしょ?」ってわかってるインタビューって全然おもしろくない。だから、それが多分偶像みたいなものを作っていくんです。
- 渡
- うん。
- りけん
- 芸能人とか有名人とかはそれでいいんだけど、そのへんのおばちゃんにインタビューした時に飛び出してくるものの方が、全然おもしろくて、
- 丹
- うん、そうかもしれない。
- りけん
- 「いやあ、あたし、実はさあ」みたいな、飲み屋で。この話、すげえおもしろいから記事にしてえなあ、っていうので、自分でやり始めて(笑)
- 渡
- なるほど。
- 丹
- おもしろいっすね。
- りけん
- そう、だから、やっぱり、
- 丹
- 即興的ですよね、それって。
- りけん
- うん。即興的であることって、なんか、そのパフォーマンスだけじゃなくて、生活が、全てが、結局なんか試されてるし。
- 丹
- 捨てる文化っていうか、カルチャーっていうか。
- りけん
- うん、だから、このコーヒーカップが落ちた時に、どうリアクションするか、みたいなところから、全て、もう、始まってるみたいな。
- カタヨセ
- ねー(笑)
- 渡
- うん(笑)
- カタヨセ
- 今回の新婚旅行の中抜けで、スゴい参考になって、即興が(笑)
- 丹
- 即興が!(笑)
- 渡
- すごいね。バランス(笑)
- カタヨセ
- バランス。さっきのリケン君の絵が、すげえ、おもしろいなって思って。(と言って、リケンくんのノートをめくる)
- りけん
- あ、前のページ?
- カタヨセ
- これ(失敗の図)。
さっきは自分(と相手)の視点で言ったじゃないですか。これ、お客さんとの視点もそうで、 - りけん
- あ、そうだ。
- カタヨセ
- ここに、自分からでちゃったもの(自分が表現したもの)が、例えばポコってあって、
- りけん
- はい。
- カタヨセ
- で、お客さんもやっぱこうやって、いるんですよね。
- りけん
- うん。
- カタヨセ
- お客さんが「ここ(表現したもの)」に来れるものでないと、もう完全にキャッチボールが出来ないんで。
- りけん
- うん、そっか。
- カタヨセ
- なので、それをお互いがこういうふうに、「シェア」できたところの「ここ」の瞬間っていうのが、
- 丹
- あ〜あ。
- カタヨセ
- すげえ、気持ちいい。
- 渡
- それが、それが、常にありたい。
- 丹
- あ〜〜〜。
- りけん
- ここを味わうために!
- カタヨセ
- そうだと思います。で、さっき言ってた僕の「軸・核」は、これなんだなって、今、思った。
- 渡
- だから、想定してたらそこに行けない。
- りけん
- あ〜!!!わかりました!(笑)
うん、うん、そうだ。 - 丹
- 中間の中間なんだ。縁側なんだ。
- りけん
- うん、だって─
- 渡
- このシーンはこうあるべきだ、っていうのがあったら、そこにいけないんです。
- 丹
- うん。
- りけん
- そっか。
- カタヨセ
- 結局、ここ(自分の枠内)をずっとやってても、
- りけん
- うん!
- カタヨセ
- もう何の刺激もないんです。
- りけん
- で、「ここ(突拍子もなく離れたところ)」やってても「こっち」の人には永遠に届かないっていう、
- 渡
- 届かないです。
- 丹
- ちょっとはみ出すってことが、
- カタヨセ
- そうそうそう(笑)
- りけん
- なるほどな〜。
- 丹
- 中間領域。
- 渡
- だから、その都度その都度、変えるっていうか、
- りけん
- で、しかも、多分!自分から失敗できないって言ったから、っていうことは、こっちにはみ出してくるのは、自分じゃ出来ないから「失敗」するか、「相手」にここに連れて来てもらうか、どっちかじゃないですか?
- 一同
- うんうんうん。
- りけん
- 例えば、この中が自分の範囲だとしたら、常にこの中じゃん、想定している筋書きって。
- 丹
- うんうん。
- りけん
- でも、失敗して、このへんにいったり。
- カタヨセ
- うんうん。
- りけん
- 誰かが変なこと言ったから、このへんに連れてかされたりして。で、自分がこっち行って、お客さんもこう来た時に、この、なんていうか、この「うううう〜」っていうのが、
- 丹
- おお〜っていうのが、
- りけん
- うん、っていうことは、本当に失敗の─
- 丹
- 失敗の芸術?
- りけん
- うん、失敗の芸術。裏切りの芸術。
- 丹
- 裏切りの芸術。
- カタヨセ
- あははは、それ、いーねー。
- りけん
- だから、失敗がここに連れて来てくれる!
- 丹
- 裏切りの芸術、即興劇。
- りけん
- 裏切りもそうだし。
- カタヨセ
- うんうん。
- 丹
- 裏切りの芸術。
- りけん
- そういうことなんだ。
アートってもしかしたら、丹ちゃんが「自分の想定外を作りたい、作りたい」って言うのは、多分、表現するっていうことが、もしかすると自分一人だけの表現だったら「ここ」を、範囲を少しずつ広げることぐらいしか、多分、できないんだよね? - 丹
- できないね。だから、誰かとコラボとかしないかぎり。
- りけん
- そう。そういうことだよね。それか、例えばお酒飲んでたりとか、だから、もしかすると、ここ突き破りたくてクスリやっちゃう人とか、
- 丹
- それあるとおもう。
- カタヨセ
- うんうん。
- 渡
- うん。
- りけん
- だから、ここを、やっぱり超えるっていうのは「失敗」か「誰か」なんだよ。
- 丹
- 「誰か」だと思いますね。
- カタヨセ
- うん。
──続きます──
ジャクソン・ポロック
Jackson Pollock
1912/1/28 - 1956/8/11
抽象表現主義の代表的な画家であり、その画法はアクション・ペインティングとも呼ばれた。彼ら(ニューヨーク派)の活躍により、1950年ごろから美術の中心地はパリではなくニューヨークであると考えられるようになった。(wikipedia より引用)
左写真/出典:http://www.tate.org.uk/
川西遼平
RYOHEI KAWANISHI
「RYOHEI KAWANISHI」のデザイナー。18歳で渡英。2011年ロンドン芸術大学 Central Saint Martins College ニットウェア科卒業。卒業コレクションが話題となり、 Vogue, Telegraph, Guardian, New York Timesなどの有力紙にて紹介される。2011 Lowe And Partners, Nova prize, Runners – up Prizeを受賞。作品をロンドンの国会議事堂内にて展示。
2012年「RYOHEI KAWANISHI」設立。2012年2月、ポーランドのワルシャワ宮殿にて開催されたファッションショーに参加。 同月、ロンドンコレクション2012年秋冬に初参加。作品をSomerset Houseで発表。BBCでその模様を放映される。 International Emerging Fashion Talent Showcase – Shortlist入賞。