編集者。ウェブマガジン「tetoteonahama」、オルタナティブスペース「UDOK.」を主宰。
活動名【からみほぐし研究所】として、drawing(線化)による表現造作をおこなう。オルタナティブスペースUDOK.共同主宰。
2012/08/22
- 渡
- 昔、ヒロシが「コンタクト・インプロビゼーション」即興ダンスのパフォーマンスを見に連れて行ってくれたことがあって。それで衝撃を受けたんですけど。
僕は今までで2回、衝撃を受けたことがって、1回目はその即興ダンスをするおばちゃん、外国のおばちゃん。
2回目は、即興(芝居)をつくったキース・ジョンストンっていう人のワークショップを受けた時が、すごい衝撃だったんです。 - りけん
- ああ〜。
- 渡
- カタヨセヒロシと(即興ダンスを)見に行った時は、いくつかのコンテンポラリーダンスがばーってやられてて、要は、振付けが決まっているダンスがいくつも続いてあって。最後にそのおばちゃんが、普通な感じで、舞台じゃなくて客席から出て来て。通訳の人引き連れてて、観客に向かって「ハーイ」って言った瞬間に、ぶわ〜って、世界が変わったんです。
- りけん
- うん、、うん、、
- 渡
- えっ!?って。なんか、圧倒的に、なんかもうそれだけで、全部が表現できている、っていうか。
- 丹
- え〜っ?
- 渡
- 即興(芝居)を作ったキース・ジョンストンも、そこにいるだけで、なんか「山」みたいな、「山」とか「海」とかの類いだな、って思ったんです。
- りけん
- はあ〜、、、
- 渡
- なんか、海とか見てるだけで「はあ〜、海いいなあ」みたいな。
- りけん
- うん。
- 渡
- 別に海は「感動させてやろう!」って思って、海やってるわけじゃないし。
- りけん
- うんうん!
- カタヨセ
- あははは。
- 渡
- ただ、そこにいるだけ、みたいな。
- りけん
- うんうん。
- 渡
- っていうことは、そういう人達って、(図を指して)これが、もう、円がないか、ぶわ〜って包んじゃっていて、
- 丹
- (笑)ないかも。
- りけん
- う〜ん。
- 渡
- 最初っから失敗も何もなく、もう、そこにいるだけで感動してしまうっていうのを、なんか、悟りじゃないけど、剣術を徹底的に極めた人は最終的に剣を置くみたいな、
- りけん
- ああ〜っ!
- 渡
- 剣いらない、っていう段階で「スゲエ」みたいな。
- ヒロシ
- ふふっ。
- りけん
- あ〜!(笑)
- 渡
- っていう領域に行っちゃうんだな、って思ったんですよ。
1こ1こ円を大きくしていきながら、最終的に、「ど〜も〜」って舞台に出ただけで、もう、そこで包まれてるみたいな、そういうパフォーマンスってすげえなって思うんですよね。 - カタヨセ
- うん。
- 渡
- それこそ、なんか「そのもの」っていうか、爆発してるみたいな、感じ。
- カタヨセ
- うんうん。
と話していると、UDOK. へ「ふんわりやわらか」な雰囲気の女性が入ってきました。
- りけん
- あ、混ざってもらったら面白いんじゃない?キャッサバさん、どうぞ。
- kyassaba
- はい。
- 丹
- キャッサバさん、今度、ワークショップ、ねえ、やったりとか。
- kyassaba
- はい。
- りけん
- どうぞ。座ってください。
- 渡
- ども〜。
- カタヨセ
- こんにちは〜。
- 丹
- 今度、ウドクで家族展をやるんです。
- kyassaba
- はい。
- りけん
- キャッサバさんは、もう、あの、自分でもコラージュの作品を作ったりとかされて。
- kyassaba
- コラージュと、あとグラフィックデザインを。
- 渡
- 即興で、あの、お芝居をしていきますロクディムといいます
- kyassaba
- あ、昨日、夜明け市場で─
- りけん
- 見た!?見た?
- kyassaba
- いや、見れなかったです。
- りけん
- あ〜。
- カタヨセ
- (頂いた名刺を見ながら)あ、東京なんですね?
- kyassaba
- はい、でも、実家は福島の伊達なんです。
- りけん
- 絵を描いたり、デザインをしたりする時に「想定外」とか「裏切り」とかそういうキーワードって、こう─
- kyassaba
- 裏切り?、、、裏切り?
- りけん
- 丹くんは自分で絵を描いている時に盛り上がってくると、やっぱ自分で自分を裏切るような作品を作りたいって。
- kyassaba
- あ〜、、、確かに。、、、そんな感じしますね。
- 丹
- そんな感じしますか?
- kyassaba
- はい、そんな感じします。
- カタヨセ
- ほお〜。
- りけん
- キャッサバさん自身は、作ったりしたりするときは、そういう気持ちってあったり?
- kyassaba
- その、だから、こういうふうなものを作りたいというふうに、お話を頂いた時に、まあ、ある意味で人を裏切るようなものは作りたいですけど、
- りけん
- そん時は自分で裏切ってんですか?なんとなく「あたしが作りたいものが出来た」なのか、「あたしって、これ、最初から作りたかったどうかわからないけど、すげえいいものができた」なのか?
- kyassaba
- あ、コラージュは特にそうですね。
- 渡
- う〜ん。
- りけん
- コラージュってけっこう即興的な感じだよね。
- kyassaba
- つくりながら、どんどん物語ができていく感じ。
- 渡
- そうですよね。
- kyassaba
- 最初は、こういう福島の風景を作りたいとか、今回はこういうふうに作りたいと思っても、1こ、紙を選んだ時に、それでもう「紙」がちょっとピンときちゃった、ちょっと違う方向にいっちゃったみたいな。
- 渡
- うんうんうん。
- りけん
- ここだ!
- 丹
- これだ。
- カタヨセ
- これだ。
- カタヨセ
- 僕達はタイトルを選んでその場でシーンをやるんですけど。「オヤジ」っていうか「おとうさん」っていうかで、次が変わってくる。
- kyassaba
- あ〜あ、ちがくなりますよね。
- 丹
- 似てるね。
- カタヨセ
- 似てる。
- 渡
- 最初の「ひと言」とか、アクションですべてが変わる。
- kyassaba
- 変わる、そうですよね。
- りけん
- そうなんだねえ。
- kyassaba
- ライブ・コラージュっていって(UDOK.の壁を指して)コレぐらいの壁でやったりするんですけど。
- カタヨセ
- へ〜。
- kyassaba
- そん時も、大体「月と地球」とかテーマ決めるんですけど。
- 渡
- 「月と地球」すごいテーマですね。
- kyassaba
- あははは
- りけん
- (笑)
- 渡
- 壮大な(笑)
- kyassaba
- けっこう暗いところでやったりすると、ブラックライトで最後、照らすように蛍光色は使おうとか、今は決めてるんですけど、
- 渡
- うんうんうん。
- kyassaba
- その過程は、もう全然(決めてない)。
- りけん
- う〜ん。
- kyassaba
- ふたりでやってるんですけど、相手がやっぱり「貼る」と、それでまた「そこに貼るのか」みたいになって、こっちもまた、
- りけん
- そうだよねえ。即興ですね。
- kyassaba
- そう、即興です。相手が持ってくる素材とかも違ってたりするので、
- 渡
- う〜ん。
- kyassaba
- 素材も、当日までは見ない。
- 渡
- あえて、見ない?
- kyassaba
- はい。
- 渡
- 完全に、想定外をつくる。
- kyassaba
- そうですね。
- りけん
- あ、そっか!想定外を作るんだ。
そうなると、例えばじゃあ、ある程度やっていくうちに「あ〜、なんとなく、こうなっちゃうな」って思ったら「こっちのほうに貼っちゃえ」とか、 - kyassaba
- あ、そうなって、一回、白く塗りつぶして、
- 渡
- おお〜。
- kyassaba
- から、破る、とか。
- 丹
- おわ〜。
- 一同
- (笑)
- kyassaba
- は、します。
- カタヨセ
- なるほどね。へえ〜。
- kyassaba
- ちょっとゴチャゴチャし過ぎて、一緒にやってる相方とこう雰囲気で「ちょっと、どう?」みたいな雰囲気になった時に、白いペンキを出す、
- りけん
- あ、やっぱ、雰囲気でわかるんだ
- カタヨセ
- うんうん。
- kyassaba
- って感じで(笑)
- 渡
- リセットシステム、いいですね。
- kyassaba
- 薄く塗ったり、濃く塗ったりするところがあって、それでまた、
- りけん
- うん!うん!
- kyassaba
- さらに上から貼って、からまた破いて、からのまた塗る、みたいなので、また。
- 渡
- うんうん。
- りけん
- そっか、だから、破いたことがそこに厚みをもたしたりとか。やっぱり、塗ったって、結局はそこに紙、何ミリかの厚みとか、
- kyassaba
- そうですね。
- りけん
- そういうのが絶対、後々残ってくるから。それでなんかこう最後の、もしかしたらはじめっから作品さ、きれいなヤツをさ、例えば、いいコラージュが出来たヤツを写真に撮って、それをそのままここ(壁)にペタって貼ったからって、いいわけじゃない。
- カタヨセ
- うん。
- りけん
- やっぱり、こう、(ここで)貼ってるその感じとか、動きとか、厚みとか、そういう「ああ、やっちゃえ!」っていうのがあるから、なんか、ある。「厚み」が産まれる。
- kyassaba
- 確かに。その破くことで、アタシ、過去が好きじゃないですか(笑)未来より。1人1人過去がでてくるのが嬉しいっていうのもある。
- りけん
- あー、破くことで過去がでてくる。
- kyassaba
- 20分前、1回白く塗ったけど。
- 一同
- うんうん。
- kyassaba
- でもアタシ過去を振り返るタイプなんで(笑)
破くと過去が見えたり「20分前のアタシこれやってた」みたいなのが、見えるのも嬉しいっていう。 - カタヨセ
- そう、僕たち、全国で色んなところでやろうっていうのがあって、僕が勝手に考えた言葉が一つあるんですけど。
「現在の過去が未来になるんだ」っていう言葉を作ってて。「未来を創ろうね」ってことも大事なんですけど、そうなると想定内になっちゃうので、今わかんないけど、今の一手をお互いが出していって出していって、物語が後ろにできていくじゃないですか。 - kyassaba
- はい。
- カタヨセ
- 過去しか創れないんです。でもそれが結果的に未来を創ることになるっていう、すごい逆説的なことなんですけど。今お話を聞いてて、それとすごい合ってて、俺も過去振り返るの好きだなって。
- 渡
- 好きなんだよな(笑)。
- カタヨセ
- うん。ほんと。うん。思い出話とかしたい(笑)
- kyassaba
- 思い出話すると、最初はこう普通にあの時ああいうコトしてたよねっていうのが、すごい個人的なマイナーな、自分だけの思い出みたいなのが出てきて、それがデザインとかのアイデアに繋がったりしたりとか。
- カタヨセ
- あー。
- 渡
- はいはい。
- kyassaba
- あと、逆に共通点があって、あ、ここの共通点があるから、じゃあ、こういう感じでデザイン化させていったら、皆そういう風に思うかな?とかそういうのもある。
- りけん
- ふ~~ん!面白いッ。はぁ~。
2012年8月5日、11日と UDOK. でおこなった家族展「Windoor」の打ち合わせに来たキャッサバさんでしたが、急遽(想定外に)混ざってもらいました。
──続きます:明日公開!──
コンタクト・インプロビゼーション
Contact Improvisation
カタヨセが渡を連れて行ったのは2005年、国際舞踊夏期大学の講師陣がおこなったパフォーマンスでした。話に出たのは「コンタクト・インプロビゼーション:初級・中級」クラスの講師「カースティ・シムソン/Kirstie Simpson」のパフォーマンス。カタヨセはこのクラスを受講しカースティの指導を受けていました。この時、渡とカタヨセは「即興で表現すること」の本質を体現している彼女のパフォーマンスを目の当りにして、衝撃を受けたと語っています。
photo(reference) ... http://en.wikipedia.org/wiki/Contact_improvisation
キース・ジョンストン
Keith Johnstone
これまでに2度来日し、ワークショップをおこなっています(渡とカタヨセは2度ともワークショップに参加しています)。
即興演技(芝居)の父と呼ばれる、即興演技を体系化した人物。様々なスタイルの即興演技(芝居、演劇)がある中で、ロクディムが最も影響を受けているのがキースのスタイルです。著書も多数、詳しくは公式Webサイトをご覧ください。
photo(reference) ... http://www.keithjohnstone.com/
キャッサバ / 佐藤洋美
kyassaba / Hiromo Sato
デザイナー、コラージュ作家
1985年 福島県出身。多摩美術大学造形表現学部デザイン学科卒業。'08年GRAPH入社。'09年、'10年TDC賞入賞。2011年よりフリーランス。ロゴマーク、ちらし、ポスター、装丁などのデザイン、イラスト、コラージュ、ワークショップなどいろいろします。整理整頓も得意です。また、「おかみさん」のメンバーとして定期的に展覧会を開催。