東海テレビ「スイッチ!」「みんなのニュースOne」気象キャスター/気象予報士。
2016/06/16
連載2回目となる今回は、前回のはなし(大学生時代の大きな挫折から、標準語を武器にしようと決意しテレビの世界に入っていく)の続きから、吉田ジョージさんのお仕事、気象キャスター・気象予報士についてになっていきます。僕たちが普段、何気なく見ている天気予報について、ジョージさんの想いをお聞きしました。
- 淳
- 僕らは、即興の芝居・コメディ(インプロ)っていうことで、「笑わせた」だけではないところでやってて。時には、何も起きない時もあるし、失敗することもある。ただ、人間が一緒懸命に絡んでいく中で、失敗もまたおもしろかったりするっていうのが、あると思う。
- ジョージ
- うん
- ヒロシ
- さっきジョージさんが言っていた、「挫折」を「自分の中でないものにして記憶から消していた」っていうところが、ジョージさんという人間の歴史の中で「じゃあ標準語を使おう」ってシフトさせる大きなことだった
- ジョージ
- うん
- ヒロシ
- 言い方がいいのかわからないんですけど、そこに「価値」というか「役割」みたいなものが、あったんだろうなあと思うんです。
- 淳
- うん。
- ヒロシ
- で、それをこう、咀嚼して、飲み込んで、血肉にしたんだろうな、っていう感じがしてですね
- 淳
- うんうん
- ジョージ
- おお~。
- ヒロシ
- すさまじい話だなあと、聞きながら思ったんです。
- ジョージ
- 多分ね、長男だから、男3人兄弟で
- ヒロシ
- あ、そうですか?
- ジョージ
- ちゃんとお金稼がなきゃっていう気持ちが強くて。あの、本当は、若い頃は売れなくても芸人で一生やっていこうと思ったけど、いや、それじゃないなと。
- 淳
- うん
- ジョージ
- ちゃんと、自分の飯ぐらいは自分で稼がなあかんなっていうのは強くて(笑)
- ヒロシ
- うんうん。
- 淳
- そう思っててもなかなか形にならなかったりもするから。実力もなければ。
- ジョージ
- いやいやいや
- 淳
- 「標準語を武器にしよう」で、あがってって。大阪できちんと番組をやっていく。
- ジョージ
- でもね、なんか、胡散臭い関西弁はやっぱ使ってましたよ
- ヒロシ
- どういうことですか?
- ジョージ
- 「なんでやねん」とか「なに言うてますの」とか
- ヒロシ
- それで、逆に突っ込ませる、とか?
- 淳
- 「なに、それ?」みたいな
- ジョージ
- そんなことないで!関西弁を、ちょいちょいやっぱり使っていかなって。そんな下手やないわ(笑)
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- ヒロシ
- 普段、東海テレビで気象キャスターをされている時って、どういう心づもりでやられているんですか?
- ジョージ
- それはホントにね、責任感。
- ヒロシ
- 責任感。
- ジョージ
- 気象情報というのは、皆さんの生命に関わることだと思っていて。それは、大雨が降ったりとか、荒れたりとかそういうヤバイ気象状況の時にも聞いてもらえる様に、普段から、いいお天気で安心な時は楽しく、本当にヤバイ時はヤバイですよっていう、空気も含めて、見てもらえるように伝わるようにと思っています。
- ヒロシ
- 言葉で「危険ですよ」っていうよりも、お芝居じゃないけど、表現として伝えるように。
- ジョージ
- 普段から「この人の言うことなら信用しよう」っていうふうに思われるように、信用されるように、心がけてますね。
- ヒロシ
- なるほど。
- 淳
- ジョージさんのブログとかフェイスブック見てると結構面白いですよね。その、いわゆるお天気の協会の言ってることと、気象協会?
- ジョージ
- 気象庁。
- 淳
- 「気象庁はこう言ってるけど、俺はこう思うよ」っていうのが書いてる。
- ヒロシ
- そんなこと書いてあるんですか?
- ジョージ
- そうですね。
- 淳
- 長いものに巻かれれば楽は楽じゃないですか、普通に考えて。気象庁の言ってる情報を流して伝えれば楽だけど。そうじゃないっていうのは、やっぱり勇気がいると思うんですよね。
- ジョージ
- 例えば、週間予報だったらね、昨日は曇りだったのに今日は雨、次の日は曇り、とコロコロ変えたくないの気象庁は。この日雨が降るかもしれない率があるけど、基本、曇りで構えてますみたいなところが見えるので、「基本曇りで構えてますね」って、言っちゃうんです。
- ヒロシ
- へー。
- ジョージ
- 晴れるか、雨降るか、という判断材料が少ないから、基本、今は曇りで構えてるだけです。でも、多分降ると思います、とかね。
- 淳
- 発言しちゃうから。
- ジョージ
- 週間予報は気象会社によっても全然違うから。
- ヒロシ
- へー、おもしろい。
- 淳
- テレビって放送時間が決まってるけど、ブログとかは自由に発言できるじゃない?時間関係なく。だからジョージさんの書く記事、おもしろい。気象庁こう言ってるけど僕はこう思いますっていうの普通に書いてる。
- ジョージ
- 俺、放送で言ったこと書いてんだよ、あれ。言ったことしか書いてない。
- 淳
- あ、そうですか。僕、普段の放送オンタイムで見れてないから。
- ジョージ
- あ、そうか。言ったこと書いてるんだよ。
- 淳
- だから、言ったことに責任持っているということですよね。
- ジョージ
- ある意味ね。で、ある意味、責任は持てないよ。だって予想だから。競馬と一緒やん。でもね、お天気は材料がいっぱいあるの。俺はあまり競馬しないけど、馬体重とか前走の成績とかいろいろ材料があって、その人が何を重視するかによって変わってくるでしょ。気象情報もいろいろ資料がいっぱいあって、俺はこれを重視するっていうことなので。
- ヒロシ
- ひと言で言い切れないんですけど、身の安全、命の危険みたいなものを、この予報で防いでいこうっていう意識って、スゴイですね。あらためて聞いて。だからこそ、天気を予報するということが、これまで進化してきているわけで。こないだの熊本の方もそうですけど、地震があって、雨が降って…
- 淳
- その雨で土砂災害が出たら、それはやっぱ命に関わってくる
- ヒロシ
- それを防ぎたい、防ごうよ、っていうのが、天気予報なんだなって思いました。日常的になんとなく天気予報を聞いていると、そこまで想像がいかないですけど。そういう意識。天気予報ってすごいですね。
- 淳
- 時と場合によって、命を奪う、救う可能性が出てくるもんね。
- ジョージ
- 正常性バイアスっていうのがあるんですけど、自分は大丈夫だって思っちゃうのね。電車乗ってて煙がバーッて出ても「何だろうなこれ?」「まあ、なんか出てきたなーっ」ていう感じで座ってるんですけど、僕だったら確実に電車から出ますね。「みなさん出ましょう」って言いますね。それは、平和ボケかなって思う。
- 淳
- 危機管理能力。
- ジョージ
- おれ、普通に夜道歩いても何秒間に一回、後ろ見ますからね。うん、こっからこういう人が出てきたら、こう殴ってやろうと思いますからね。
- 淳ヒロシ
- (笑)
- ジョージ
- 常に命の危険を感じながら生きてます。
- 淳
- 想像性の部分ですね。
- ヒロシ
- 僕は2011年以降、路上がガラスまみれになっても大丈夫な靴を履くようになりました。
- ジョージ
- ああ、大事ですね。
- 淳
- (ジョージさんの足元をみて)でも、サンダルですね
- ジョージ
- 俺、今日サンダル履いてるけど。
- 淳ヒロシ
- (笑)
- 淳
- 確かに、3・11はそういったことを再確認した経験で・・それでも人間はそれを忘れていっちゃう。だからジョージさんみたいな存在は、すごい重要なのかなあって思う。
- ジョージ
- それでも、俺、あの津波は想像できなかったね。あれは分かんなかったね。
- 淳
- 例えば「明日雨降りますよ」っていうじゃないですか。それが仮に、地震が絡んでくるっていうこともあるわけじゃないですか。地震があって、雨が降るっていうことは、もしかしたら土砂災害が来るかもしれない、だったら山から離れた方がいいっていうのは情報として繋がってくるから。
- ヒロシ
- 例えば、そういう状況があったとして、普段の元気なジョージさんが、明らかにいつもと違うテンションで「危険ですから気をつけて下さい」と言ってる。だから「今回のは気をつけよう」と見ている人が思う、そういう信頼関係が築ける、築いていこう、っていうのがすごいなって思いました。
- 淳
- テレビは一方的に情報を伝えていく世界だから、その世界の中で、視聴者と信頼関係を築いていこうというジョージさんの言ってることとか、姿勢とか、すごいなあって思う。
- ジョージ
- この間あった鬼怒川の決壊もね。僕は地方が違ったからそんなに注視してなかったけど、明らかにおかしなものがレーダーに出てたから。「これヤバイよ」っていうのは、関東の気象予報士さんも伝えてた。あんだけ伝えても伝わらないっていうこともある。
- ヒロシ
- 受け取る側の問題もあるんでしょうね。
- ジョージ
- 関東地方には、明らかに奇妙な、真っ赤なラインが縦に走ってて、うわあ、これなんだろうって思ってたけど、東海地方にはなかったから、まあ、いいかって思ってしまった部分がある。
- ヒロシ
- その地域の人や、行政の人の受け取り方、対応によっても関わってきますからね。
- 淳
- 自分の住んでいる地域だけじゃなく、他の地域の知り合いに「もしかしたらだけど大丈夫?」って言うこととか、逆に他の地域の人を通じて正確な情報が伝えられることもあるのかもしれない。
- ジョージ
- 東京の気象予報士が「東海地方で明日は大雨です」って言っても、それは静岡のことだったりするわけ。でも、静岡の天気がそのままこっち(名古屋)には当てはまらないから。
- ヒロシ
- そうか。そうか。地域性というか、「東海地方」というまとめ方によって、
- ジョージ
- だから、それは静岡のことを言ってますって、言うべきことは言う。でも、やっぱりね、ちゃんとやってても文句いっぱい来るんですよ。やっぱり。
- ヒロシ
- そうですか。
- ジョージ
- 晴れるって言ったのに、雨が降ったので、ビンテージジーンズ干したのに濡れてしまったと。弁償してくださいとかって来るわけです。
- 淳
- すごい飛躍ですね(笑)
- ジョージ
- 最初は、お金を稼げるようにっていう「手段」として気象予報士を勉強してみようと思ったんだけどもね。勉強しだしたら楽しくてね。
- 淳
- お~。
- ジョージ
- だから、最終的には「一般気象学」っていうすごい難しい教科書があるんだけれども、それを読みながらね、焼酎のロック飲んでましたから
- 淳
- (笑)
- ジョージ
- 気象予報士の勉強が、お酒のアテになってったっていうぐらい楽しすぎて。
- ヒロシ
- へ~!
- ジョージ
- だって今まで、なんで雨が降るとか意識したことなかったから
- 淳
- うん
- ジョージ
- なんで雨が降るんだろうか?
- ヒロシ
- たしかに
- ジョージ
- ねえ。だから、それを学問的に知りだしたらすげえ楽しいなあと思って。お酒飲みながら勉強がすすむすすむ。
- ヒロシ
- お酒もすすむすすむ。
- ジョージ
- そう(笑)だから、そういう意味では、お天気っていうのは飯食う「手段」というよりは、「出会えてよかったもの」うん。
- ヒロシ
- すごい
- ジョージ
- まあ、なんかね、彼女にフラれた時に
- ヒロシ
- あれ、いきなり?
- ジョージ
- いや、そうそう(笑)
当時、フラれた彼女がタレントさんで、その彼女の本棚に「気象予報士」の本があって、でも全然受かりもしなかったから、ちょっと見返してやろうっていう気持ちも、ちょっとあったかも。きっかけとしてね。 - 淳
- きっかけ(笑)
- ジョージ
- これ取ったろ~、って(笑)若干あったよ(笑)
- ヒロシ
- なるほど
- 淳
- いろんなもので形成されてるんですね。
- ジョージ
- 若干ありましたね、本当に。
- ヒロシ
- そういうところからスタートしていくのって、ありますよね。
- ジョージ
- ありますあります。
- 淳
- それが偶然であったり必然であったり、ある意味、ジョージさんは即興で生きている人なのかもしれないですね。
- ジョージ
- そうですよ、即興ですよ、人生は即興ですよ!(笑)
- ヒロシ
- 人生は即興!あ、でも、テレビでお天気やる時は、台本とかあるんですか?
- ジョージ
- 台本はないです。
- ヒロシ
- え、ないんですか?
- ジョージ
- 100%アドリブです
- ヒロシ
- えー!?
- ジョージ
- 原稿を書く予報士がいたりするところもあるんですけど、今は僕しかいないから。ま、最初は自分で書いてたんですよ。
- ヒロシ
- はい
- ジョージ
- でも、なんか、だんだん書くの面倒くさくなってきて
- 淳
- 書いても自分で読むわけですもんね
- ジョージ
- 時間的に、しんどい時、忙しい時とか、書いていられなくて、書かずに出た時に「ああ、書かなくてもいいかな」っていうのがあって。そうすると、その時の言葉で喋るからね。
- ヒロシ
- そうですね。
- ジョージ
- うん。
- 淳
- 番組の枠、コーナーとして「何分」っていう決まったものはあるけれど、しゃべってる内容は即興っていうことは「即興のシーン」ですよね(笑)
- ジョージ
- だって、最初3分半って言われたのに、急に4分半やってくれとか、時間がないから2分半でやってくれとか、あるからね。
- 淳
- あ~。
- ジョージ
- すごい、幅があるわけ。
- ヒロシ
- そうかそうか。
- ジョージ
- だから、まあ、アドリブでやるしかない。
- 淳
- だから、アドリブの世界を生きているといえば、生きているんですよね。
- ジョージ
- そうなんですよ、アドリブなんですよ。逆に原稿を覚えるのが苦手なんです。
- 淳
- 僕もそうかもしれない(笑)
- ジョージ
- 全く覚えられない
- ヒロシ
- じゃあ、もう、完全に即興向き、完全に即興の人ですね。
- 淳
- うん
- ジョージ
- ありがたいですね
- ヒロシ
- いやいやいや。そっかー。(本番)できるだけ出て欲しいですね
- 淳
- ねえ。
- ジョージ
- いやいやいやいや~。ちょっとでいいです
- ヒロシ
- いやいやいや(笑)
- 淳
- でも、ジョージさんを楽しみにね、見に来てくれる方もいらっしゃるし。恐らく、普通にテレビで見てた気象予報士としてのジョージさんを知ってらっしゃる方の方が多いと思うんですよ。
- ジョージ
- 終わった後のフリートークとか、すげえ、得意だと思う
- 3人
- (笑)
- ヒロシ
- 僕、今回、短い時間ご一緒させてもらって、昨夜一緒に行った茶飯事(原田茶飯事)のLIVEの前のご飯、「ピカイチ」でしたっけ?
- ジョージ
- はいはい
- ヒロシ
- あの「ピカイチ」さんのお母さん、ジョージさんのことテレビで見てて知ってるけど、「知ってるわよ!」って言ってこない、知ってるけどあえて言わないけど知ってるんだよ!っていう、あれ、すごい素敵でしたね。
- 淳
- 名古屋の感じですね。
- ジョージ
- あれね、本当にね、大阪と名古屋で全く違うんですよね。大阪はね、すごい言ってくれるんですよ。「見てるでー」って
- ヒロシ
- 町中とかで
- ジョージ
- 僕、言われたいタイプで
- 淳
- 確かに(笑)
- ヒロシ
- わかりやすいですもんね
- ジョージ
- 名古屋の人は二度見とかするわけ。でも声はかけてこなくて。その時に一緒にいた奥さんから「なんかさっき、お天気の人って言ってたよ」って聞いて、もう、直接言ってくれたら、全然、おれ、愛想ふるのになあって。
- 淳
- (笑)
- ヒロシ
- 言ってくれよと!(笑)
- ジョージ
- 全然、物足りないです(笑)
- 淳
- ちょっとね、遠慮しちゃったりしますからね、テレビに出てる人とか普通に見ると。声かけるのがちょっと恥ずかしい気持ちもね。
- ジョージ
- まあね、でも(笑)
- ヒロシ
- ジョージさんて、子どもの頃から人前に出るの得意だったんですか?
- ジョージ
- いや、全然
- 淳ヒロシ
- えっ!?
- ジョージ
- 小学生の頃はほとんど喋らなかった
- 淳ヒロシ
- え〜っ!?
──続きます──
一般気象学 第2版補訂版
ジョージさんがお酒のアテに最適だったというほどおもしろかった「一般気象学」お天気に興味ある方ぜひ!
「気象学のバイブル」とも評されるロングセラーテキスト.大気の構造から放射,降水,大気力学まで,平易でコンパクトな解説はそのままに,今回の補訂版では地球環境問題に関する記述をアップデートする.気象予報士試験のための知識を身につけるうえでも最適.[東京大学出版会:内容紹介より抜粋]
詳しくは「東京大学出版会」Webサイトにて
中国料理ピカイチ
吉田ジョージさんに連れて行ってもらった名古屋の名店!店内には壁一面の野球選手のサインと電光式スコアボード!中日ドラゴンズが得点するとドラがなる賑やかで美味しい中国料理がいただけます。
[アクセス]今池駅9番出口から徒歩2分。
〒464-0850 名古屋市千種区今池1-14-5
詳しくは「中国料理ピカイチ」Webサイトにて