今回は、10回目というロクディムの活動の区切りとも言える東京単独ライブ。
そこで共同主宰のカタヨセヒロシに、ロクディムを代表して語ってもらいました。
「ロクディムの今、これまで、これから、」
普段は内側にあって見えてこない「てん」と「てん」で紡がれる「想い」。
ロクディムの活動の裏側にあるものを触れてみてください。
ロクディムの今
『今回のライブへの想い』
昨年の「第6回したまち演劇祭 in 台東」で、ロクディムフェスティバルと題して同じ「浅草 東洋館」で5日間でやりましたけど、4日目の回かな?カーテンコールが起こった回。
客観的に映像を見ても面白くて、これまで記録に残っているものの中で、ライブとして一番いいなと思っているんです、全体的に。
「あれ以上、ロクディムとしてどうやったらできるんだろう」
っていうのが、ロクディムとして今回ひとつのチャレンジなんです。
その回のカーテンコールをしている写真があるんですけど。
カーテンコールで3回挨拶に出たのかな?
で、3回目の挨拶が終わってロクディムがはけた後に、子供が一人客席から舞台の前の方に出てきて、「もう出ないのかなぁ?」って見てる写真が残ってるんです。
それがもう、なんか物語ってるなと。
あの一体感なり、ライブ体験みたいなものはすごいなぁって。
あれを超えたいんですよ。
でも越えようとしてもダメなんですけどね・・・(笑)
『浅草 東洋館という劇場の魅力』
観客と舞台が近いんですよ。
距離的なことか分からないんですけど、お客さんの笑った声が、空間に広がって、「わっ」と回るんですよ。
あれはやっていて気持ちいいし、多分お客さんも、自分たちが楽しんでるエネルギーを自分たち自身で感じてるんじゃないかなって。
すごくエネルギーが回る空間だと思うので、そこを体感して欲しいですね。
昨年のライブに、鎌倉の友達がちょっと遅れてきてくれたんですけど、劇場のドアは本番だから閉まってるじゃないですか。
でも、そのドアの向こうから「どっ!!」と笑いが聞こえてきたって言っていて。
それは音でいうと「どっ!!」なんだって(笑)
「笑い声って「どっ!!」て聞こえるんだね〜」て言ってて、それを聞いたときに、確かに「どっ!!」になる空間だなって・・・。
つまり、一体感があるんですね。
それと、やっぱり歴史があるんですよ。
これまでの東洋館、浅草、演芸という。
そこで、ロクディムとして『即興で芝居をやる』というパフォーマンスをすること。
僕らがやっている、いわゆるインプロと呼ばれる即興芝居が日本に入ってきて、まだ20年と少ししか経っていなくて、歴史的なところからいったら演芸などから比べたら、ちっちゃなものなんですよね。
そういう文脈の中で、僕らがやるっていうことを、僕はチャレンジと思ってるんだけど、そのチャレンジを、「浅草」という町や人や歴史から「おう、やってみなよ!ただし良いモンやれよ」と言われているように思います。
そんな気持ちでチャレンジする姿やパフォーマンスをお客さんには見て欲しいし、応援して欲しい、楽しんで欲しいです。
ロクディムのこれまで
『出会いと別れという経験』
最初の頃と比べると、自分の足で立って歩き始めたなって感じます。
最初は何もわからないまま「やろう!」って言って始めて、でも、自分たちの手がとどく範囲って狭いじゃないですか?
ハイハイして、立ち上がってつかまり立ちして、みたいな世界だから、結局動ける範囲は狭いんですよね(笑)
そんな状態でいろんな人と出会って、いろんな経験を共にして、もちろん出会って別れる人も当然いて・・・。
だけど、その出会ったこと、別れたことには意味があるんだと思うんですよね。
だからまず、出会ってくれてありがたいなぁと思うし、そこで一緒に過ごすことで得たものもある。
その上で、残念ながらここまでだねっていう関わりの方もいたんですけど、その出会いと別れが積み重なってロクディムとしての経験が増えて、少しずつだけどより多くの人に届くようになってきたのかなと思います。
世界が広がってきた感じはありますね。
『即興を届けていくこと』
時々、ライブ中に突然新しい(即興の)ゲームをやろうとか言っちゃうんですけど。
ゲームを新たに増やすことをやりたいわけではなくて、「またヒロシは新しいゲーム考えたよ、目新しいことやりたんだよね」ってメンバーは思ってんだろうなと思うんですけど。
「でも違うんだよ!」と。
半分当たってるけど、半分違う(笑)
「ちょっといいじゃん、次違うことやろうよ」みたいなとこもあるんですけど(笑)
もう半分は、いかに『即興を知らない人に、どうやったら届けられるんだろう?』と。
僕たちは、俳優や役者に対する「演技レッスン」のひとつという形でインプロ(即興の芝居)と出会い、やり始めたんだけど、そうじゃない人、ところへも届けたいなと思うようになっていて。
なぜなら、インプロ(即興の芝居)ってすごく根源的なところにアプローチするので、普遍的だし、恐らく多くの人や事に共通すると思うんです。
それを、例えば教育の現場とか、いわゆる一般的な社会って言われるところへ、「どうやったら広げられるかな?届けられるかな?」って工夫をしていくことが面白いなと感じてます。
固定化されているままで続けるのはいやだなぁと、思ってるんでしょうね、きっと。
ロクディムのこれから
『即興の魅力と挑戦』
僕たちのパフォーマンスの大きな特徴は、「色々な場所や空間、人とやれる」というのがあると思っていて、その場所だから生まれるもの、そこから影響されるもの、それは、場所や空間とのコラボレーションとも言えるかもしれないのですが、そういうものがあると思います。
空間が変わることで、毎回変化があって、面白いなぁと思うし、個人的にも刺激的だし。
人というところでも、他のジャンルの人と絡むことも多く、面白いです。
他ジャンルだからこそのコラボは毎回刺激的ですね。そのあたりは、毎回実験だなぁと思います。実験?チャレンジかな(笑)
また、8月に行った九州大分のツアーでは、いわゆる大ホール(1,000人規模)でやらせてもらう機会が多かったので、大きい会場でどうやって見せるか?というところもね、もっとチャレンジしたいですよね。
ライブをバックのスクリーンで流してやるとか。
『これからの社会で即興するということ』
2011年に東日本大震災があって、その年の6月と7月に福島県のいわき市(カタヨセヒロシの地元)でパフォーマンスをやる流れになるんですけど。
僕はその頃から「即興ってなんだよ」って思っていたところもあって。
「失敗していいよ」って言葉が、即興ではよく言われるのですが。
それはそうなんだけど「それ、だめでしょ!」って思う時もあって。
失敗を失敗でいいよ、次に活かそうよ
っていうのを、どのレベルで自分が消化できて、どのレベルで外に出せる(表現できる)のか?って考えた時に、すごい悩んだんですよ。
ぐるぐる悩んで考えた結果、
僕の中では「それ答え出なくていいんだな」と思ったんです。出せないわ、と思って。
いいとか悪いとかじゃなくて。
そのことに「自分がどう取り組んでいくかでしかない」と思った時にちょっと楽になったんです。
「失敗していい」って、ある視点から言ったらそうだし、別の視点から言ったらダメだよねってなるから。両方あるんだ!のままいこうと思って。
絶対的な答えがないのが「答え」だから。
「なんで即興やってるのか?」って問いがあるとしたら、「答えがないからやっているんだな」っていうのが、今の僕の中のひとつの答えなんです。
ロクディムのキーワードに「この瞬間を一緒に笑おう。」という言葉があるんですが。
「笑う」って強さだと思うんです僕は。
人生は、楽しいだけじゃない、もちろん。
辛いこと、悲しいこと、どうしようもないこととか、人生にはあるんだけど、でも、それをひっくるめて、笑おう!っていう。
笑いがない瞬間だって、もちろんあるじゃないですか、絶対ね。
それはもちろんあるんですよと、その時はそれでいいんですと。
ただ、そのままでいいのか?っていうと、永遠には良くないと思うんです。
流れがあって、どこかのタイミングで、その流れがまた笑える方になる時が必ず来ると思うので、そういう願いも込めていろんなものもひっくるめて、時間経過も含めて笑おうよと。
それが「この瞬間を一緒に笑おう。」なんです。
今回、本当のナマを見て楽しんでもらえたらなと思います。
浅草 東洋館は、いわゆるお芝居をする『劇場』じゃないんです。
なので、音響、照明とか、そういった演出的なものは限られてる。かといって素舞台でもない。
なので、僕たちが必死なのがすぐわかります(笑)
そういう外側からの演出でごまかせないので。
ぜひ浅草 東洋館で、そんな僕たちの姿を見て笑ってください。
僕たちのチャレンジする姿を見て、笑って、応援してください。
みんなでこの瞬間を一緒に笑いましょう。